研究課題/領域番号 |
16K13029
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
矢野 彰三 島根大学, 医学部, 准教授 (80403450)
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研究分担者 |
磯村 実 島根大学, 人間科学部, 教授 (40272497)
山崎 雅之 島根大学, 人間科学部, 准教授 (60379683)
和田 孝一郎 島根大学, 医学部, 教授 (90263467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔細菌 / 歯周病 / 生活習慣病 / 疾患集積性 |
研究実績の概要 |
歯周病は慢性炎症を基盤とする非アルコール性脂肪肝炎(NASH),糖尿病,高血圧,内臓肥満,動脈硬化症や脳心血管病など多様な疾患と関連する可能性がある。また,これらの疾患は特定の個人に集積する傾向が認められる。近年,私どもは唾液サンプルのDNA解析により全身疾患誘発性の歯周病菌を含む口腔細菌の検出・同定方法を確立した。本研究では,歯周病,口腔細菌と生活習慣病発症および疾患集積性との関連を明らかにするとともに,健康維持における歯周病治療の有益性について検討する。 比較的大規模な横断的観察研究と少数例の前向き介入研究とを組合せることにより,より強固なエビデンスと研究の推進力を得ることを目指して本研究を開始した。観察研究:歯周病および口腔細菌と生活習慣病,疾患集積性との関連について,各地域での健診とサンプル収集により,3年間で2,000人超のデータ収集と解析を行う。介入研究:歯周病菌の除菌による歯周病治療を行い,検査値(炎症・脂質・血糖値)や疾患活動性,内臓脂肪量などの改善と介入後の新規疾患の発症率の低減を明らかにする。 上記の目標に対して,現在概ね順調に進めているところである。観察研究:島根県雲南市,邑南町および隠岐の島町での健診を実施し,回収した口腔サンプルからのDNA抽出,定量的リアルタイムPCRを用いた菌種の同定・定量を行い,現在データの蓄積を行っている。2016年度の健診では,計約800人の口腔サンプルを収集し,口腔細菌の同定・定量を行いながら患者情報の入力作業を行っている。介入研究:地域の医院や歯科医との連携を行い,研究に協力・参加できる医師・歯科医師に対して理解を得た。2016年度は島根大学医の倫理委員会において研究計画の承認を得ることができ,研究を開始する前段階となった。現在具体的な業務の流れを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,観察研究については,例年通り大学と共同で地域の健診を行った。昨年度は,5~7月にかけて邑南町,6月に隠岐の島町,8月~11月にかけて雲南市において実施した。文書にて説明の上,同意の得られた方の情報を収集し,唾液サンプルを回収した。当初の目標として,「各地域で健診を行い唾液サンプルの収集を3年間で2,000人超のデータ収集と解析を行う」としているので,昨年度の計約800人というのは妥当な数値であり,進捗状況としては予定通りであるといえる。しかし,過半数を超えていないことから,予定よりも早いとは言えないと思われる。したがって,概ね順当な進行と考えている。 一方,介入研究についても,当初の計画では,「研究の観察期間は1年間とし,登録期間は2018~2019年の1年間とする。目標対象者数は100人とする。本研究の対象は,本院・市内開業医に通院する地域住民のうち,未治療の歯周病を有する患者とする。」としていた。これに対して,実施施設で該当患者数が予定よりも少ないと見込まれたため,研究解析手法に多少の修正を余儀なくされた。具体的には,当初考えていたクロスオーバー法をシングルアームの治療介入群のみとし,治療前後での比較に変更した。これにより,必要症例数は統計的に33例と算出され,不適格例および脱落例を考慮して10%症例数を上乗せすると,目標症例数は37例の登録が必要であると考えられた。これらの研究計画の変更を経て,2016年12月26日に島根大学医の倫理委員会の承認に至り,2017年1月17日に大学病院医療情報ネットワークの臨床研究登録システムに研究情報の登録を行った(試験ID:UMIN000025706,試験名:歯周病の治療が口腔内細菌と糖代謝に及ぼす影響)。したがって,現時点までは比較的順調な進行と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
観察研究:今年度および来年度の健診において,一般健診,歯科健診と同時に唾液サンプル収集を継続して行う。延べ2,000人超の県内の地域住民について,DNA解析によりP.GingivalisやS.Mutansなどの口腔内細菌の種類・量を同定し,疾患,検査値との関連について統計学的に解析する。可能であれば,今年度の登録数を増やし,2,000人を超えれば,できるだけ早期から解析を開始したいと考えている。 介入研究:初年度は登録期間のため,患者登録とベースラインの記録,採血を行う。開始前,終了時,終了3ヵ月後,の3回測定を行い終了とする。現在研究が開始できるにもかかわらず,まだ研究参加者の登録ができていない状況である。この原因として,実施施設のマンパワー不足も否めない。現在病院の事務職員が研究補助を行っているところであるが,参加登録が進行しない場合は,研究補助業務の担当者を新たに募集するなどの手立てが必要と思われる。研究実施における医師の負担軽減ならびに業務の円滑な遂行に向けて取り組みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費において、初年度の購入予定の口内細菌の分析に用いる試薬等について、当初の目測がやや過剰であった。年度内に購入しても使用が先になると古くなってしまうため、購入を次年度にすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究自体が遅れているわけではないため、昨年度購入予定であった試薬等の購入に充てる見込みである。
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