平成29年度は、歩行活動の質の変容が日内ストレスと睡眠に及ぼす影響を検証することを目的とした研究課題Ⅱを実施した。具体的には、歩数の増加または至適運動強度の活動を増加させる異なる1日単位の介入方法にてメンタルストレス関連尺度の日内変動および睡眠に及ぼす影響を検討した。 3種の介入方法は、活動量計を応用し、ベースライン(日常)に対して同等に歩数を向上させるが、中等度強度以上(MVPA)あるいは血中乳酸閾値強度以上(LT)の活動時間の増加の程度が異なるような仕組みを施した。心拍R-R間隔変動(HRV)を日中連続して測定し自律神経活動を評価すると同時に、ストレスや睡眠の質を評価した。その結果、次のような知見を得た。1日の歩数は3種の介入方法で同等水準に向上したが、MVPAおよびLTの活動時間は介入方法間に有意差が認められ、歩行活動の質の変容が確認された。しかし、3種の介入法のうちLT介入時のHRVの高周波成分が低値、低周波/高周波比が高値を示したものの、介入方法間に統計学的な有意差は認められなかった。経時的に評価したPOMS-Briefの主観的感情尺度6項目およびTotal Mood Disturbance得点も同様に有意な交互作用を認めなかった。また、介入翌日起床時に評価した主観的睡眠感の「疲労回復」因子に介入方法間に差の傾向がみられたものの、他の因子を含め全5因子に有意な介入方法間の差異は認められなかった。以上のように、歩行活動の質の変容によるストレスおよび睡眠への明確な影響は認められなかったが、一方で、本研究で施した程度のマイルドな運動強度の範囲であれば両者にネガティブな影響を及ぼすことなく活動の質を変容できるとも考えられた。 研究期間全体を通じ実施した研究課題Ⅰと課題Ⅱより、座位活動および歩行活動を主体とする職場身体活動変容法の開発へ繋げ得る知見を得た。
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