研究課題/領域番号 |
16K13041
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 誠 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 教授 (50242409)
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研究分担者 |
仙石 泰雄 筑波大学, 体育系, 助教 (30375365)
岡本 嘉一 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90420083)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 褐色脂肪 / MRI / 水中運動 |
研究実績の概要 |
褐色脂肪細胞は脂肪酸を熱エネルギーに変える働きを持ち、これまで成人になると消失するとされていたがその説が覆されたことで、肥満解消の一戦略としてここ数年研究が盛んである。しかし、ヒトでの測定については放射線被曝を伴うFDG-PET/CT法がゴールドスタンダードとなっていることもあり進んでいない。本研究では放射線被曝を伴わないMRIでの簡便な測定方法を確立するとともに、特に寒冷刺激を兼ね備える水中運動に着目しながら、運動が褐色脂肪へ与える影響について検討することを目的としている。 本年度は、課題①測定・画像解析方法の検討及び、課題②アスリートを対象とした夏季・冬季における横断的研究について進めた。 1.課題①については、文献研究と並行して測定データ(課題②において取得したMRI画像データ)での解析を繰り返し、至適条件を検討した。MRIによる画像取得シークエンスは、3point-DIXONと2point-T2に決定した。画像解析方法は脂肪画像データにおいて肩甲骨から鎖骨周辺の脂肪組織エリアを同定し、エリア内の脂肪含有率(fat fraction)の違いから褐色脂肪組織を決定する方法を確立した。 2.課題②については、陸上運動群・水中運動群・非運動群の3群28名について、夏(7~9月)と冬(12月~2月)それぞれ二回の測定を実施し、27名分の解析可能な画像データを取得した。(1名については画像アーチファクトが強く解析から除外した。)測定方法と解析方法については課題①で決定した方法で行った。解析は完全に終了していないが、①白色脂肪も含む脂肪組織は、非運動群>水中運動群>陸上運動群の順で多く検出された、②褐色脂肪量は、水中運動群>陸上運動群≧非運動群という傾向が見られているが、更なる詳細な検討と統計解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度中に計画していた二つの課題はおおむね達成されている。課題①ではMRIでの計測方法と解析の決定を目的とし、撮像時のシークエンス及び取得画像から褐色脂肪組織を同定する方法についてはほぼ確立した。課題②においては、異なる環境での運動習慣を持つアスリートを対象とし、横断的に褐色脂肪の保有を観測することを目的とした。水中運動群、陸上運動群、運動習慣無し群の3グループすべてで夏季と冬季におけるMRIでの計測は完了している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則り研究を推進する(課題③の実行)とともに、課題①及び課題②の研究結果について日本肥満学会他、適切な学会での発表と論文化を進める。 平成29年度の研究課題として、課題③である「継続的な水中運動を実施した縦断的研究」を実施する。被験者は運動習慣のない一般健常男性20名とし、陸上運動介入群と水泳運動介入群の二群に無作為に分け、それぞれ定められた負荷・頻度の運動介入を実施する。運動介入は週3日4週間とし、運動介入前後において、課題②と同様の方法でMRIによる撮影および解析を行い、運動による影響を観測する。運動強度は計画では最大酸素摂取量の60%程度の負荷としたが、褐色脂肪組織に影響を与える運動負荷は未知数であり、運動強度の設定については課題であると言える。リクルートされた被験者の体力レベルも考慮に入れながら運動強度の再考を図りたい。また、褐色脂肪は季節による変動が認められているため、実施時期についても検討が必要である。特に季節の境目での実施は季節変動による影響が強く見られる可能性があるため、周辺環境が安定する時期を見定めながらの実施となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
MRIのコイル等を購入する予定であったが、研究協力者(こころの医療センター)保有の物を使用したので予算支出予定から減じた。
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次年度使用額の使用計画 |
MRI画像解析ソフト購入に充てる
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