研究課題/領域番号 |
16K13044
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 特任講師(常勤) (30432446)
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研究分担者 |
樋野 展正 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (90469916)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / 核内受容体PPARδ / 翻訳後修飾 / 光クロスリンク |
研究実績の概要 |
近年の食生活や運動不足に起因するエネルギー過剰の状態を解消することは、生活習慣病発症の予防に繋がることから、骨格筋をターゲットとしたトレーニングによるエネルギー消費の促進や、トレーニング効果が得られる薬剤の開発が健康長寿社会を実現するためには重要である。核内受容体PPARδは、骨格筋の質の規定や骨格筋における脂肪燃焼を介したエネルギー消費の亢進に関与しており、PPARδの活性制御メカニズムを解明することは、トレーニング効果が期待出来る生活習慣病の予防・改善法の確立に重要と考えられる。 まず、PPARδを活性化する成分を同定するスクリーニング系を構築し、種々天然成分のPPARδ活性を評価した。 次に、申請者が同定したPPARδの翻訳後修飾を受けるアミノ酸残基について、翻訳後修飾を受けない変異体を作製した。野生型あるいは変異体を発現する細胞株を樹立し、PPARδのリガンドで処理した。その結果、脂肪酸の燃焼に関わる標的遺伝子の発現量は、変異を導入することによって増加した。 さらに、翻訳後修飾によるPPARδの転写制御機構を明らかにするために、その領域と相互作用する分子の探索を試みた。相互作用分子を同定するための光クロスリンク可能なPPARδ発現ベクターを種々用いてクロスリンク実験を行ない、SDS-PAGEを行なった。その結果、従来の免疫沈降実験では認められず、クロスリンク可能な発現ベクターを用いた時のみに認められる泳動バンドが検出されたことから、実際にこの領域を介してPPARδと相互作用する因子が存在することが示唆され、それら複合体を精製できたものと考えられた。 以上より、PPARδは翻訳後修飾を受ける領域を介して複合体を形成すると共に、その領域の翻訳後修飾を制御することによって、より効率的にエネルギー消費を促すことが可能になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、トレーニング効果が期待出来る生活習慣病の予防・改善法を確立することを目指して、骨格筋においてエネルギー代謝の調節を担っている核内受容体PPARδについて翻訳後修飾や相互作用因子などに着目して解析し、PPARδの新たな転写活性制御機構を解明することを目的とする。 本研究により、PPARδの翻訳後修飾の有無が、人工的なレポーター遺伝子を用いた転写活性のみならず、細胞内における内在的な標的遺伝子の発現をも制御している事が示された。また、その領域を介する相互作用分子の存在が示された。さらに、PPARδ活性化成分を同定できるスクリーニング系を構築した。これら得られた結果は、PPARδの新たな制御機構を介した生活習慣病発症の構築予防に繋がる可能性があり、非常に意義深い結果と考えられる。 このように本研究は、概ね順調に進展している。一方、当初の計画では、平成29年度中にPPARδの活性制御に関する研究成果を論文としてまとめて投稿する予定であり、論文投稿料を予算に計上していた。しかしながら、本研究成果を論文投稿するためには、追加実験が必要となった。そこで、当初予定していた平成29年度までの補助事業期間を平成30年度までに延長し、早急に論文化を行い論文の受理を目指すと共に、国際学会発表を行い広く世界に発信することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、PPARδの活性制御に関する研究成果の論文化を最大の目的とする。そのために、これまでに得られたPPARδの活性制御に関する知見を活用し研究を推し進め、必要なデータを取得すると共に、平成29年度までのデータ及び平成30年度に得られる追加データを合わせて論文化を行い、論文の受理を目指す。さらにそれら成果を基に国際学会発表を行い、研究成果を広く世界に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、いずれもおおむね順調に進展している。一方、当初の研究計画では、平成29年度中にPPARの活性制御に関する研究成果を論文としてまとめて投稿する予定であり、論文投稿料を予算に計上していた。しかしながら、本研究成果を論文投稿するためには、追加実験が必要となった。そこで、当初予定していた平成29年度までの補助事業期間を平成30年度までに延長し、その研究を実施するために必要な予算を繰り越したため、次年度使用額が生じた。そこで次年度は、PPARδの活性制御機構の詳細を明らかにする。具体的には、PPARδの活性化成分の同定、複合体の解析等を行う。それらに関わる細胞培養用培地、血清やプラスチック器具、酵素、キット類の試薬の消耗品を購入する。さらに、得られた研究成果を論文としてまとめ投稿するために掛かる費用を論文投稿料等して、それら成果を国際学会にて発表するための旅費等として使用する。
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