近年、高齢化に伴う運動器障害による生活の質(QOL)低下につれ、医学的治療を必要とする人口が増加傾向にあり、その対策は社会的にも重要課題である。しかし、加齢に伴う種々の要因により進行する筋萎縮・筋肉量減少(サルコペニア)は、そのメカニズム解明が困難であることから、治療法開発が進展しない。近年開発されたゲノム編集技術は、これまで困難だと考えられてきた遺伝子改変を容易にする生物学の常識を覆す革命的技術で、培養細胞系や受精卵のみならず、成体実験動物においても応用されている。本課題は、治療法開発の困難な加齢による筋力低下をターゲットに、現在も進化発展中であるゲノム編集技術(CRISPR/Casシステム)の安心・安全な利用を探索しつつ筋肉量増大を図り、要支援・要介護からの開放やQOL上昇を目指すことを目的とした。 マイオスタチン遺伝子は筋形成を負に制御する遺伝子で、そのノックアウトマウスは筋量が増大した表現型を示す。そこで、このマイオスタチン遺伝子を標的としたCRISPR/Casシステム用発現ベクターを構築し、in vivoにて筋肉へ導入することで、マイオスタチン遺伝子を破壊し、筋量増大へ繋げることを試みた。 導入手法としては、最初エレクトロポレーション法を用いたが、実際の臨床応用を見据え、バブルリポソームを介した導入であるソノポレーション法も検討した。プラスミドの生体への導入を判定するコントロールとしてはEGFP発現ベクターを用いた。
|