近年の創薬技術は著しい進歩を遂げており、優れた薬理作用を有する薬物を見出すことが可能となっている。しかしながら、それらの薬物を生体に投与すると、標的部位となる病巣への移行性に乏しく、かつ他の組織において副作用が発現するなどの問題が生じる場合が少なくない。本研究では、動脈プラークに対する標的指向性を搭載したドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築を目的とし、マクロファージまたは泡沫細胞の細胞表面に特異的に発現している抗原に対する抗体を表面修飾したリポソームを調製し、その標的指向性を評価した。リポソーム表面への抗体修飾率は、抗体をチオール化する際に用いる2-iminothiolaneの存在比が多い方が高い値を示した。また、限外ろ過によってリポソームと混合する抗体を濃縮することで、高い抗体修飾率が得られた。これらの方法で調製した抗体修飾リポソームの粒子径とゼータ電位は、調製4週間後においても変化せず、安定性が維持されていた。RAW264細胞において、細胞表面に発現するFcレセプターに親和性を有するIgG抗体でリポソームを修飾することにより、細胞内リポソーム取り込み量はコントロールリポソームに比べて有意に増大した。また、泡沫化細胞に発現する酸化LDLレセプター(LOX-1)に対する抗体で修飾することにより、泡沫化細胞によるリポソームの取り込み量は上述と同様に有意に増大した。以上のことから、抗体修飾リポソームは、動脈プラークに、選択的に治療薬や検査薬を送達可能な標的指向型DDSとなりうることが示された。
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