研究課題
オルガノイド培養法は、Lgr5陽性の幹細胞を含む組織構造体(オルガノイド)をin vitroで培養・維持する画期的な技術であり、生体内の細胞と極めて類似性の高いin vitroでの研究を可能にした。本研究では、このオルガノイド培養技術により、腸管上皮由来の若い幹細胞と老化した幹細胞を培養・維持し、網羅的な遺伝子発現やエピゲノム変化などを検討することでステムセルエイジングの解明を試みた。若齢マウスと比較して、老齢マウスでは、腸管上皮オルガノイド樹立の成功率が有意に低下しており、老齢腸管上皮由来オルガノイドでは、腸管陰窩構造の形成能力が低下していた。マイクロアレイにより網羅的な遺伝子発現解析を行ったところ、幹細胞マーカーであるLgr5の発現が老齢腸管上皮由来オルガノイドで有意に低下していた。また、p16やp21などの老化関連遺伝子の発現が老齢腸管上皮由来オルガノイドにおいて有意に上昇していた。次に、加齢に伴うエピゲノム変化について解析を行ったところ、p21のプロモーター領域のDNAメチル化レベルが老齢腸管上皮由来オルガノイドにおいて有意に低下していた。また、Lgr5のプロモーター領域における遺伝子発現抑制系のヒストン修飾であるヒストンH3リジン27トリメチル化(H3K27me3)が老齢腸管上皮由来オルガノイドにおいて有意に亢進していた。以上の結果より、老化したマウスの腸管上皮由来オルガノイドでは、組織構築能力が低下しており、幹細胞の増殖能も低下していることが示唆された。これらの一連の変化はDNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノム変化が重要な役割を果たしていると考えられた。若い幹細胞においてはエピゲノム状態はほぼ均一に保たれているが、加齢に伴い自己複製を繰り返すことでエピゲノム変化が蓄積し、最終的には幹細胞の枯渇に伴う組織の機能不全や増殖異常につながることが考えられた。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Oncotarget
巻: 9 ページ: 9925-9939
10.18632/oncotarget.24066
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2821
10.1038/s41598-018-21121-6
BMC Gastroenterology
巻: 17 ページ: 136
10.1186/s12876-017-0689-3.
International Journal of Molecular Science
巻: 18 ページ: E1111
10.3390/ijms18061111
Cancer Science
巻: 108 ページ: 678-684
10.1111/cas.13165
https://research-highlights.keio.ac.jp/article/99/ancient-antiviral-response-could-help-treat-cancer
https://www.youtube.com/watch?v=QgmysbH_6_A&t