研究課題/領域番号 |
16K13052
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
福 典之 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (40392526)
|
研究分担者 |
膳法 浩史 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 博士研究員 (90749285)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ミトコンドリアDNA / 12S rRNA / MOTS-c / 遺伝子多型 / 耐糖能 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアDNA (mtDNA)は、酸化的リン酸化を担う13種のタンパク質と、それらの発現に必要な2種のrRNAsならびに22種のtRNAsをコードしており、ミトコンドリアが独自に持つシステムで転写・翻訳されると一般的に考えられている。最近、mtDNAにコードされている12S rRNA配列部分から転写されたmRNAが核遺伝子コードを用いて16個のアミノ酸から成る新規ペプチド(MOTS-c)を合成し、それが骨格筋においてインスリン作用を向上させるという知見が報告された(Lee et al, Cell Metab, 2015)。この新規MOTS-cをコードする塩基配列領域内には、日本人を中心とした北方アジア人に特異的な多型m.1382A>Cが存在し(Fuku et al, Aging Cell, 2015)、この多型の有無と身体活動量の組み合わせが2型糖尿病と関連するという知見をこれまでに得ている。そこで本研究では、この知見をさらに発展させるため、m.1382A>C多型によるMOTS-cのアミノ酸配列の違い(K14Q)がインスリン作用に及ぼす機序を解明することを目的とする。 肥満モデルマウスを実験対象とし、腹腔内グルコース負荷テストを行った。結果として、MOTS-c 14K投与群はプラセボ群やMOTS-c 14Q投与群よりも耐糖能が良好であった。一方、MOTS-c 14Q投与群はプラセボ群と同様の血糖変動を示した。以上のように、MOTS-cのアミノ酸置換は肥満マウスの血糖変動に影響を与えることが明らかとなった.このことは、日本人を中心とした北方アジア人に特異的な多型m.1382A>Cの有無が2型糖尿病と関連するというメカニズムを説明するものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肥満マウスを対象に腹腔内グルコース負荷テストを行った。肥満モデルマウスを作製するため、8週齢のCD1雄性マウスに3週間の60%高脂肪食を与えた。また、同時期の3週間にMOTS-c 14K、MOTS-c 14Q、またはプラセボ(滅菌水)を毎日腹腔内に投与した。腹腔内グルコース負荷テスト当日は、空腹時のマウスに麻酔を施し、グルコース溶液を腹腔内投与した。その後、15分毎に120分まで血糖値を測定した。テスト終了後、細胞内情報伝達経路の解析のために骨格筋や肝臓、脂肪を摘出した。腹腔内グルコース負荷テストの結果として、MOTS-c 14K投与群はプラセボ群やMOTS-c 14Q投与群よりも耐糖能が良好であった。一方、MOTS-c 14Q投与群はプラセボ群と同様の血糖変動を示した。以上のように、MOTS-cのアミノ酸置換は肥満マウスの血糖変動に影響を与えることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、MOTS-cのK14Qアミノ酸置換が肥満マウスの耐糖能に差異を与えることを明らかにした。今後はその詳細なメカニズムを明らかにするため、組織や細胞レベルでの検討を実施する必要がある。特に、インスリンによる糖取り込みの律速段階となる糖輸送単体(GLUT4)ならびにAMPK経路、インスリンシグナル経路の関与を解析するため、摘出した組織を用いてリアルタイム PCR法およびウェスタンブロット法により遺伝子発現ならびにタンパク質発現の評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
MOTS-cの測定をEuropean Univiersity of MadridのAlejandro Lucia教授に依頼予定であったが、新しくMOTS-c測定キットが市販され、独自に解析することになったが、その測定系の確立に時間を要した。
|
次年度使用額の使用計画 |
8月までにELIZAキットを用いて、昨年度実施予定であったMOTS-cの測定を終了させる予定である。
|