研究課題
本邦は急激な高齢化社会を迎えアルツハイマー病(AD)などの認知症の患者も増加の一途をたどっている。しかしながらAD に至る原因の解明はいまだ進んでいない。申請者は細胞死に至らない軽度の脳虚血刺激においても脳内にリポフスチン様自家蛍光物質が増加することを認め、「ストレスなどにより引き起こされる脳循環障害がAD などの起因のひとつではないか」と仮説を立てた。この仮説を明らかにするために短時間脳虚血ストレスもしくは緊張性ストレスをマウスに負荷し①認知学習機能に影響するか?②脳内の難溶性蓄積物質が増加するか?③認知学習機能と難溶性脳内蓄積物質の関連は?の3点を明らかにするために計画された。当該年度は、加齢性の認知機能障害を生じると報告のあるPin1遺伝子欠損(KO)マウスの脳の容積をMRIにより経時的に計測し脳の萎縮などが生じるのかを調べた。その結果、Pin1 KOマウスは野生型マウスに比べ脳の容積が有意に2%程度小さいことが明らかとなった。この変化は加齢により違いを示さず、比較的、若年齢からも認められており発生学的異常に基づく変化である可能性を示した。さらに、脳の前額面の面積から、脳のどの領域に違いがあるか調べたところ海馬の認められるbregmaの-2.0mmから後頭部にかけては有意な違いを認めなかったが、-1.0mmから前頭葉にかけて小さいことが明らかとなり海馬領域の萎縮は少ない可能性が見出された。今後、脳虚血による脳血流の修飾が脳のサイズに与える影響を調べ、脳内の不溶性タンパク質の蓄積などを検討する。
2: おおむね順調に進展している
ストレスなどによる脳循環障害を調べる前段階として、加齢性の認知機能障害を生じると報告のあるPin1遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、脳の容積を最大18カ月間、2~3か月ごとにPin1 KOマウスと同コロニーから得た野生型マウスの前額断面をT2およびT1強調画像により測定した。我々の予備試験において11カ月齢のPin1 KOマウスは新規物質認知機能や水迷路試験において認知機能の異常が認められていたが、MRIによる解析によりPin1 KOマウスは野生型マウスに比べ脳の容積が2%程の有意に小さいことを認めた。しかし脳の容積は比較的若年齢からも認められておりこれまで報告されていた加齢変化というよりも発生学的な異常である可能性を示した。さらに、脳の前額面の面積から、脳のどの領域に違いがあるか調べたところ海馬の認められるbregmaの-2.0mmから後頭部にかけては有意な違いを認めなかったが、-1.0mmから前頭葉にかけて小さいことが明らかとなり海馬領域の萎縮は少ない可能性が見出された。
今年度の研究により、本研究の基礎となる非脳虚血マウスの脳の容積が明らかにできた。今後、比較的軽度な虚血(細胞死を引き起こさない程度の前脳虚血)をマウスに負荷し脳の容積が修飾されるか調べる。さらに、脳内のリン酸化Tauの蓄積やグリア細胞の活性化などを明らかにしていく。
当該年度の3月ごろに購入した物品費(約20万円ほど)の金額が未確定だったために清算を行っていなかった。その未払い物品のために未使用額が生じているが,実質、本年度の予算は予定通り使用できている。
平成29年度に支払いが可能となった際は速やかに支払う。また、平成29年度は、脳虚血により誘導した脳低循環マウスの作成やその機能解析など計画通りに実施する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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