研究課題
本邦は,超高齢社会を迎えアルツハイマー病(AD)などの認知症の患者も増加の一途をたどっている。しかしながらAD等に至る原因の解明はいまだ進んでいない。申請者は細胞死に至らない軽度の脳虚血刺激においても脳内にリポフスチン様自家蛍光物質が増加することを認め,「ストレスなどにより引き起こされる脳循環障害がAD などの起因のひとつではないか」と仮説を立てた。この仮説を明らかにするために短時間脳虚血ストレスもしくは緊張性ストレスをマウスに負荷し①認知学習機能に影響するか?②脳内の難溶性蓄積物質が増加するか?③認知学習機能と難溶性脳内蓄積物質の関連は?の3点を明らかにするために計画された。これまで,報告者はPin1 KOマウスが空間認知機能だけでなく明暗ボックスにおける不安行動や行動や他者との社会性行動にも異常があると明らかにした.そこで,経時的に脳内の組織学的変化を調べた.トルイジンブルーやHE染色およびFluroJadeB染色による形態学的異常や顕著な細胞死は認められなかった.しかし,βアミロイドを染色を免疫染色したところ視床の神経核に付随して多数の封入体を認めた.電子顕微鏡で確認したところ細胞質に存在する線維状の封入体であることが明らかとなった.さらに,この封入体は野生型でも一定量認められたがPin1 KOで有意にサイズが大きく,電子顕微鏡像では核を圧迫しているような形態を示した.視床は大脳皮質や海馬などの情報伝達の交差点のような役割があることからこの部位のアミロイドの蓄積が様々な行動異常に関連している新しい知見を得た.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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