研究課題/領域番号 |
16K13059
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
家光 素行 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (90375460)
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研究分担者 |
真田 樹義 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50421227)
橋本 健志 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70511608)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アディポカイン / 動脈硬化 / 脂肪 / 有酸素性運動 |
研究実績の概要 |
体内の脂肪の過剰な蓄積(肥満)は虚血性心疾患,脳血管疾患などの動脈硬化性心血管疾患の発症リスクを増大させる。昨年の研究成果から,運動による動脈硬化の改善効果の機序として,脂肪減少により脂肪細胞から産生されるアディポカインの1つであるCTRPs(adiponectin,CTRP3,CTRP5)の血中濃度の変動が関与する可能性を明らかにした。しかしながら,CTRPsがどの脂肪部位から主に分泌されているかは明らかでない。そこで本研究は,有酸素性トレーニングにより全身に局在する脂肪組織のCTRPs遺伝子発現変動に局在性があるかを明らかにすることを目的とした。38週齢のSAMP1老齢マウスを有酸素性運動群(自発的回転車輪運動,n=10)および安静対照群(n=7)に分け,12週間後に精巣上体,皮下,大動脈血管周囲,肩甲下褐色の脂肪を摘出し,CTRPs mRNA発現を検討した。安静対照群において,精巣上体,皮下,褐色脂肪のadiponectin mRNA発現は血管周囲脂肪と比べて有意に高値を示した。また,CTRP3 mRNA発現は肩甲下褐色脂肪と比べて精巣上体,皮下脂肪で有意に高値を示し,CTRP5 mRNA発現は血管周囲脂肪と比べて精巣上体,皮下,肩甲下褐色脂肪で有意に高値を示した。一方,有酸素性運動群の精巣上体および肩甲下褐色脂肪のadiponectin mRNA発現は安静対照群と比較して有意に増加したが,それ以外の脂肪部位では変化が認められなかった。加えて,CTRP3 mRNA発現は精巣上体脂肪においてのみ有酸素性運動群で有意に増大したが,CTRP5 mRNA発現はどの脂肪部位においても変化が認められなかった。このように,脂肪組織におけるCTRPs mRNAは局在する脂肪部位により発現量が異なるだけでなく,運動トレーニングによる発現変動も局在性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有酸素性トレーニングによって低下した動脈硬化度に関連する新規アディポカインとして同定したCTRPs(adiponectin,CTRP3,CTRP5)が有酸素性トレーニングによってどの脂肪部位から主に分泌されているのかを遺伝子発現レベルで明らかにしたが,今後,運動によるこれらのアディポカイン変動が動脈硬化の低下に対して関与しているのかについて動物実験を用いて検討する必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
運動により血中濃度が増大したアディポカインであるCTRPs(adiponectin,CTRP3,CTRP5)が動脈硬化度の低下に対して貢献するのかを動物実験を用いて確認し,さらに,動脈血管組織においてどのような分子機序で動脈硬化を低下させるのかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも実験試薬が安価に調達できたため、次年度使用額が生じた。そのため、血中濃度が増大したアディポカインであるCTRPs(adiponectin,CTRP3,CTRP5)が動脈硬化度の低下に対して貢献するのかを動物実験を用いて検討するためのリコンビナント購入として使用する予定である。
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