研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経細胞が特異的に障害される難病である。抗酸化酵素であるCu,Zn-スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は家族性ALSの原因タンパク質の一つであるが、ALS発症機構は未だ不明である。ALS患者の病変部位に SOD1陽性の封入体が認められることから、SOD1自体の凝集がALS発症に関与すると考えられている。本研究の目的は、ALS病変部位に存在するSOD1凝集体を特異的に認識するモノクロ-ナル抗体を開発し、変性SOD1の構造とALS病態の解明をめざすことである。今回開発した新規抗体はこれまで報告されている抗体よりもALSモデルマウスの病変部位を特異的に染色したことから、ALS病態解明に役立つと期待される。一方、アポSOD1の還元はアミロイド様線維化を引き起こすことが報告されている。高濃度のSOD1を異なるpHで変性させたところ、pH 5.0では凝集が見られたのに対し、pH 3.0とpH 4.0ではゲル状に固まることを見いだした。そのゲル内にはアミロイド様の線維が認められた。そこで、タンパク質線維の間に水分子が入ることでゲル状になるのか、タンパク質自体に水分子が結合しているのかを検証するために、水晶マイクロバランス分子間相互作用分析装置(QCM)のセンサーにSOD1を固定化し、線維ゲル化が起こる緩衝液に置換して37℃中で周波数変化を測定した。その結果、pH 3.0とpH 4.0の変性条件下では質量増加を示す周波数変化が観察された。置換後の溶液中にはSOD1が存在しないことから、質量の増大は変性SOD1への水分子の結合と考えられた。今後は変性SOD1に対する新規抗体の反応性とともにALS患者標本の解析を進めていく計画である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0205090
10.1371/journal.pone.0205090