研究課題/領域番号 |
16K13070
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
深田 智 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (70340891)
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研究分担者 |
小島 隆次 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (00531774)
来田 宣幸 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (50452371)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動指示 / 言語理解 / 運動解析 / パフォーマンス / 自発的なうごき / 社会性 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、関連情報を収集し知見を深めるとともに、成人を対象とした実験や子どもを対象としたフィールド調査と予備調査を行い、その成果を、CogSci2017、日本認知科学会第34回大会、共創学会第1回年次大会、1st Seminar on the Development of Intersubjective Recognitionを含む国内外の学会・研究会等で発表した。詳細は下記の通りである。 1.基礎的な運動パターンの一つである垂直方向へのジャンプを取り上げ、成人を対象とした実験を行った。ジャンプ動作を引き出す様々な指示のことばを検討し、そのことばの分類基準を提示するとともに、各ことばが実際にどのようなジャンプパフォーマンスを引き出すのかをキネマティクス情報をもとに質的・量的に分析した。またアンケート調査を実施し、実際に指示にそってジャンプするという経験が、指示のことばの意味理解に影響を及ぼすかどうかなどを検討した。 2.子どもを対象としたフィールド調査では、ある年齢の保育園児の集団を対象とした身体表現教育場面の経年データから、指導者と子ども、並びに、子どもどうしのことばでのやりとりの変遷を明らかにするとともに、子どもの自発的なうごきにも注目して分析を行い、その質的な変化が子どもが用いることばの変化と同様に指導者のことばに影響を与えることを指摘した。 3.子どもを対象とした予備調査では、異年齢の子どもたちを対象に、実際の運動指導の現場に即した状況の中で実験を行い、ことばがけと産出される運動との関係を観察した。年齢毎のジャンプパフォーマンスの差異やことばがけのタイミング、運動指示のことばに伴うパラ言語情報やジェスチャの重要性を再確認し、運動指導時に用いられることばの意義・役割について再検討しながら、子どもを対象とした本実験に向けての知見を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
関連情報を積極的に収集し、知見を深めると同時に、成人を対象とした実験を行うことで、ことばの理解とそれによって産出されるうごきの動的な関係の一端を明らかにし、その成果を発表することが出来た。また、保育園児の身体表現教育場面の経年データの分析では、指導者と子どもそれぞれが発したことばに関する質的・量的分析に加えて、子どものうごきに関する分析も行い、その相互関係の変遷を子どもの社会性の発達とも関連づけて考察した研究成果を発表することが出来た。加えて、異年齢の子どもたちを対象とした予備調査を実施し、研究の伸展につながる知見を得ることもできた。ことばとうごきのそれぞれに対する詳細な分析・検討を加えながらも、指導者と指導対象者、あるいは、ことばとうごきとの双方向的な影響関係について考察し、ことばとうごきの発達に関しては社会性の発達にも言及しながら、その動的な相互関係の一部を、研究成果として国内外の学会・研究会等で発表することが出来たという点で、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28、29年度に得られた調査・実験の結果と発達科学をはじめとする関連研究の知見をもとに、引き続き成人及び子どもを対象とした調査・実験を行い、ことばとうごきの動的関係に関するモデルを構築する。具体的には、他者のうごきを引き出すという限定された状況の中で用いられることばの役割を再検討し、パラ言語情報やジェスチャーも交えた運動指示のことばを呈示する実験を成人・子どもを対象として行う。子どもを対象とした調査・実験では、実際の運動指導の現場に近い状況を設定し、「指導者側の変化」にも注目しながら、一連の運動指導の中で双方向的に変わっていく指導者と受け手のことばとうごき―小松ら(2003)のいう「相互適応」(mutual adaptation) に相当すると思われる―に関して検討を加える。言語発達、運動発達という2つの発達の軸を、社会性の発達という第3の軸とも関連づけ、モデル化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)平成29年度も、平成28年度同様に、当初の計画以上に研究が順調に進んだ。大人を対象とした実験や子どもの経年データの分析、子どもを対象とした予備的実験を通して、ことばとうごきの動的関係が明らかになり、これに、他者との関係性や場面や状況の限定性も深く関与していることが示唆された。次年度は、ことば-うごきのモデル化に向けて、実際の運動指導の現場により近い状況設定の中でのさらなる検証と考察が必要となる。その経費として次年度使用額が発生した。
(使用計画)次年度は、大人と子どもを対象とした実験を行い、複数の国内外での学会・研究会での成果発表を予定している。また、年度末には、国内外の研究者を招いて「ことば-うごきフォーラム」を開催し、ことばとうごきに関する多彩な研究を発表し合い、議論を深めていく予定である。学会・研究会参加に関わる旅費、実験参加者への謝金、フォーラム参加者への謝金などにより、平成29年度に生じた未使用分を有効活用する。
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