研究課題/領域番号 |
16K13074
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
島谷 康司 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (00433384)
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研究分担者 |
島 圭介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50649754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳児 / 初期歩行 / 風船 / 姿勢制御 |
研究実績の概要 |
初期歩行期乳児に風船の紐を把持させると,初期歩行獲得後の比較的安定した歩行に近似することを示した.平成29年度は,生体の揺らぎを計測するために重心軌跡情報を使って時系列カオス解析を行い,生体の揺らぎの影響による非線形性と決定論的性質を抽出し,身体重心動揺の特徴量を示した.そして,時系列データのリアプノフ解析から軌跡との自己相似性を検証し,風船把持の有無による各指標の差を導出した.さらに浮遊する風船特有の動きを除去した体性感覚情報の揺らぎを検証するために,指先で紐を把持する指先力の揺らぎを計測し,カオス解析をした. 立位時の身体重心(COM)と足底圧中心(COP)を計測した結果,風船把持によりCOPの変化が抑制され,姿勢動揺の抑制が確認された.スペクトル解析の結果,風船把持によるスペクトルの低下および高周波帯域の割合が増加し,風船把持により体性感覚系有意な姿勢制御戦略にシフトしていることが明らかとなった.さらに,COM,COP,風船の揺れの最大リアプノフ指数の解析結果,それぞれの指標の姿勢動揺はカオス性を示していることが明らかとなり,COM,COPは従来の知見と一致した.さらに,風船把持によりサンプルエントロピー値(SampEn)が増加傾向にあったことから,制御系への入力が増え,そのため制御システムがより複雑になったことが考えられる.また,筋骨格モデルを用いた逆動力学解析の結果,風船を把持することで筋発揮力は増加傾向にあり,風船を把持することで制御戦略が変化し,筋使用戦略が変化したと考えられる. 以上,スペクトル解析,複雑系解析,筋骨格モデルを用いた逆動力学解析結果として,風船把持が立位状態に及ぼす影響として,姿勢制御戦略が体性感覚優位の制御に変化し,姿勢制御システムがより複雑になり,姿勢制御の筋活動が効率の良い制御戦略に変化し,身体動揺の抑制につながった可能性が示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①乳幼児の運動学的特徴の解析,②風船型歩行の定量化とモデル化,③歩行支援の有効性の導出,④実践における実用性の検証の4つの構成となっている.平成29年度までに風船把持歩行定量化システム・歩行モデル構築(①,②)を目標として実施した結果,当初の予定通りに進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には,初期歩行期の発達遅延を呈する乳幼児の歩行支援の有効性を導出を目的とし,実践における実用性の検証を行う.さらに,トレーニングシステムの開発にチャレンジするために,研究協力者であるMorasso教授(IIT,イタリア)の指導を受ける予定である(訪伊する).
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はモデル解析がメインとなり,物品購入費用,被験者への謝金等が予想よりも低くおされられた.平成30年度は挑戦的にさらに研究を進展させるための物品購入費用とMorasso教授への指示を仰ぐための訪伊のための費用を計画する.
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