研究課題/領域番号 |
16K13079
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
細田 直哉 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 助教 (60622305)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保育環境 / アフォーダンス / 発達 / 学習環境 / 教育的環境 / 玩具 / 保育者の実践知 / 環境デザイン |
研究実績の概要 |
保育環境に関する著作のある国内の専門性の高い保育園・幼稚園の園長・保育者に自身の園の保育環境の場所の構造に込めた意図に関するインタビューを行い、それと共に、その環境における実際の乳幼児の行動を動画データとして記録した。インタビューから明らかになった保育者の環境の場所のデザインの意図と、動画データとして記録された乳幼児の実際の行動とを比較対照し、乳幼児の行動の特徴が環境の場所の構造に支えられていると見なせる場合、その環境の場所の構造を「保育環境のアフォーダンス(=活動を支える環境の性質)」として抽出し、基本的な面からなる抽象的モデルとして表現した。さらに、その場所の構造に込めた保育者の意図をキーワードとして各構造をラベリングし、そのラベルに基づき環境の場所の構造を分類した。 その結果、保育者が乳幼児の発達を促進するために環境の中に埋め込んでいる場所の構造は大きく分けると、a)「活動の選択を支える構造」、b)「活動の集中を支える構造」、c)「活動の発展を支える構造」の3種類に分類できることが明らかになった。さらに、そのような場所の構造の中に配置される「玩具」ががどのような意図の下に選択・配置されているのかを明らかにするため、0歳児から2歳児クラスの全玩具を、それがどのような活動を子どもに可能にしているのかという観点から分類した。その結果、0歳児から2歳児クラスの玩具は、a)全身の姿勢や粗大運動の発達を支える玩具、b)手指の微細運動や認知の発達を支える玩具、c)社会的・情動的な発達を支える玩具の3種類に大きく分類可能であることが明らかになった。以上の研究結果を現場の保育者が環境構成の際に参考にできるように一般の保育雑誌に1年間連載して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中でデータの収集・分析に使用していたPCが故障し、それと前後して動画の分析に使用する予定であった解析ソフトがうまく作動しないなど、研究データの収集およびそのデータの質的な分析に予想以上に時間がかかり、研究の次のステップに進めなかった。 その一方で、質的分析と環境のアフォーダンスの試案的なモデル化には一定の成果はあり、部分的には次年度に予定していた研究の先取りを行えた面もあった。ただし、それらのモデルはまだ部分的なものであったため、それをさらに全体的に精緻化する必要があると判断し、その質的なモデルを検証するための量的な分析や、その質的モデルを導入した保育環境の改善のアクションリサーチを行う段階にまでは進めなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
保育環境における乳幼児の行動の動画データを分析するソフトの使用環境は整い、動画データを提供してくれる園も確保できたため、これまでの研究成果をベースにして、今後は量的な分析を実施し、質的モデルの妥当性を量的に検証することが可能になる。また、アクションリサーチの実施園として、2018年度から2019年度に新規に開設する2つの保育園に研究協力をいただけることにもなった。さらに、これまでの研究成果を保育雑誌に発表した結果、全国の園から保育環境に関する園内研修の依頼も来ている。それら多数の園の環境改善のプロセスの中に、これまでの研究で得られた質的モデルを活用し、その効果を量的に検証していくことができれば、研究は大いに進展することが見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たなデータ収集および分析を行う予定であったが、すでに得られたデータの分析に予想以上に時間がかかり、新たな研究段階に進めなかったため。次年度は、新たなデータを得るための旅費、保育環境の構成に使用する実験的な家具等の制作費、データ分析のための人件費等に支出が予想される。
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