研究実績の概要 |
海洋ポリケチド天然物アンフィリオニン-5は、マウス骨髄由来間葉系幹細胞および骨芽細胞の増殖を極低濃度で促進する生物機能を有することから、骨関節疾患の再生医療や骨粗鬆症治療薬開発のためのリード化合物としての可能性を秘めている。しかし、その立体配置が完全に決定されていないため、細胞増殖促進分子としての機能解明や応用研究は手つかずの状態にある。 アンフィリオニン-5のC1-C9部分におけるC4/C5位の相対配置を決定するとともに、提出されたC9位の立体配置の帰属に誤りがあることを明らかにするとともにC9/C12位の相対配置を決定した。次に、分子右端部に位置するC26位の立体配置の決定に取り組んだ。C17-C28部分に相当するモデル化合物として可能な2種の立体異性体を設計し、Brown不斉クロチル化、Sharpless不斉エポキシ化と5-exo環化により2,5-シス-テトラヒドロフラン環の構築を鍵反応として、C17-C24部分に相当するアルデヒドを合成した。一方、両鏡像異性体が入手可能なRocheエステルを出発物質としてC25-C28部分に相当する2種類のヨウ化物を合成し、有機セリウム試薬へと変換して、上記のアルデヒドへの求核付加反応によりフラグメント連結を行った。得られたアルコールをフェニルチオカーボネートへ誘導し、Barton-McCombie脱酸素化を行った後、末端オレフィンを導入することにより、C26位に関する2種類のC17-C28ジアステレオマーモデル化合物の合成を達成した。合成した2種のモデル化合物のNMRデータを天然物の当該部分と詳細に比較した結果、2種類の化合物の間で極めてわずかな差が観測されたものの、明確な結論を得るには至らなかった。今後さらに、これら2種の化合物のどちらが天然物と同一の立体配置を有するかを検証する必要がある。
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