研究課題
放線菌由来デプシペプチドantimycin化合物群は、類似した構成アミノ酸が異なる回数の縮合を経た大きさの異なるlactone構造を持つ。28年度は、JBIR-06生合成酵素のPKSモジュールのAT、ACPドメインをantimycinのものに置き換え、antimycinの多様なアルキル基を持つ新規trilactone化合物を合成に着手した。また、JBIR-06型の開始基質、antimycin型の伸長基質を受け入れるKSドメインを創出、化合物合成系に用いることで、人工生合成遺伝子クラスターの構築に着手した。Neoantimycinのラクトン環縮小のため、環構成アミノ酸の導入を担う最終モジュールの欠損を試みた。JBIR-06生合成遺伝子クラスターの配列と比較することで、酵素活性を失わず、目的の化合物を合成する変異酵素遺伝子を設計し、大腸菌in vivoでの組換え反応を用いて遺伝子組換えを行い、変異酵素遺伝子発現ベクターを作製した。それを放線菌発現宿主へ導入し、遺伝子発現することで物質生産系の構築を行った。異種発現系にて蓄積した化合物を単離し、NMR、MS分析によって構造決定を行った。その結果、テトララクトンがトリラクトンへと変化した新規neoantimycin類縁体が得られたことが判明した。また、種々の副生成物が得られ、現在それらの構造決定を行っている。本研究成果より、一般に改変が困難なモジュール酵素をエンジニアリングし、非天然型化合物合成に繋げるために有益な知見が与えられたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、Neoantimycinのラクトン環縮小類縁体の生産にも成功し、順調に進捗している。
Antimycin、JBIR-06合成酵素のKS-ATドメインの結晶構造解析に着手する。触媒ドメインをモジュールから分割する必要があるが、deoxyerythronolide B合成酵素のKS-ATドメインのモジュールからの分割を例にして行う。コドンを最適化した遺伝子をpET、pQEベクターを用いて大腸菌生体内で発現し、タンパク質の大量発現を行う。His-tagを用いたアフィニティー精製の他に、AKTA explorerシステムによるイオン交換、ゲル濾過クロマトグラフィー精製を行うことで高純度タンパク質を取得、結晶化に供する。SmlC-AntD融合型PKSモジュールの創出および物質生産への利用。立体構造より見出したAntDの伸長基質認識に関わる部分をSmlCに導入し、変異型KSドメインを作製する。得られた変異型KSドメインをantimycinのAT、ACPドメイン、SmlCのTEドメインと連結した複合型モジュール遺伝子をin-fusion PCR法 (Takara) を用いて連結し、SmlABD三遺伝子発現放線菌に導入して発現する。得られた発現放線菌宿主を培養し、LC-MS分析することによって非天然型化合物ができるか試験する。得られた化合物は大量調製の後NMR、MS分析にて構造決定する。さらに我々が過去にantimycinの化合物ライブラリー作成に用いた同様の手法により、様々な伸長基質の原料を培養液に投与することで多様な側鎖を持つtrilactone型化合物ライブラリーを構築する。得られた化合物ライブラリーを抗菌活性試験、Bcl-xL活性試験に供してその阻害活性を調べる。
有機化学、生化学試薬など消耗品のストックがあり、消費が予想外に少なかった。
有機化学、生化学試薬、ガラス、プラスチック器具など消耗品の購入に充てる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 56 ページ: 1740-1745
10.1002/anie.201611371
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~tennen/head.htm