研究課題/領域番号 |
16K13089
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
居原 秀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60254447)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レドックスメタボロミクス / メタボローム解析 / イミダゾールジペプチド / オキソヒスチジン |
研究実績の概要 |
予備的検討でヒスチジンおよびイミダゾールジペプチドのレッドックス代謝物の検出に成功していたが、レッドックス代謝物の存在様式の全容はほとんどわかっていない。本申請研究では、タンデム型質量分析装置を用いた多重反応モニタリング法、安定同位体希釈法により、ヒスチジンおよびイミダゾールジペプチドのレッドックス代謝物を定量的に解析する方法を確立し、生体内レッドックス代謝物を網羅的に解析し、これまでほとんどわかっていない生体内イミダゾールのレッドックス代謝とROS/RNSシグナル、酸化ストレスとの関連性の解明に向けた研究を展開することを目的とした。平成28年度は、まず、イミダゾールジペプチドの合成方法を確立した。当初の予定である酵素的合成法を検討したが、化学合成法も検討したところ、化学合成法で収率が高かったため、化学合成法によりイミダゾールジペプチドを合成し、現在市販されていないホモカルノシンを調製することができた。また、市販の安定同位体β-アラニン、ヒスチジンを用いることにより、安定同位体イミダゾールジペプチドを調製した。さらに、銅/アスコルビン酸法によりオキソ体を調製した。これらの標準物質を用いて、多重反応モニタリング法の最適化を行い、実際の生体試料中の含量を安定同位体希釈法により定量的に解析した。解析の結果、生体内の様々な臓器にイミダゾールジペプチドが存在し、そのレドックス代謝物である2-オキソイミダゾールジペプチドを世界に先駆けて定量的に同定した。また、酸化ストレスが関連している敗血症性脳炎モデルマウスの脳において2-オキソイミダゾールジペプチドレベルが上昇していることを明らかにした。またモデル細胞を作製し、酸化ストレスとイミダゾールジペプチドのレドックス代謝との関係を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として、平成28年度は、①ジペプチドの調製、②イミダゾール化合物のレドクス代謝物調製、③安定同位体化合物の調製、④HPLC-タンデム型質量分析装置を用いた多重反応モニタリング法による定量的解析法の確立、を計画していた。①に関しては、当初酵素的合成法を計画していたが、酵素調製が予想以上に困難であること、基質特異性が狭い、収率が悪いなどの問題があったため、化学合成法を検討した。その結果、現在市販品として入手可能なカルノシンとアンセリン以外にも、ホモカルノシン、ホモアンセリンも調製可能であることが明らかとなった。②に関しては、連携研究者(内田)が報告しているアスコルビン酸-銅イオンシステムによりオキソ体を調製した。③に関しては、市販品として入手可能なヒスチジンとβアラニンを用いて、①の方法で安定同位体イミダゾールジペプチドを合成した。さらに②の方法により安定同位体イミダゾールジペプチドのオキソ体のみを調製した。④に関して、①~③で調製した化合物に対して、HPLC-タンデム型質量分析装置(Waters 社)を用いた多重反応モニタリング法の条件設定を行い、定量的検出法を確立した。 また、平成29年度に計画していた⑤生体内ヒスチジンおよびイミダゾールジペプチド-レドックス代謝物の網羅的かつ定量的解析の一部として、生体内における2-オキソ-イミダゾールジペプチドを上記④で確立した定量的解析法を駆使して、定量した。その結果、2-オキソ-イミダゾールジペプチドを世界に先駆けて定量的に同定した。また、酸化ストレスが関連している敗血症性脳炎モデルマウスの脳において2-オキソイミダゾールジペプチドレベルが上昇していることを明らかにした。またモデル細胞を作製し、酸化ストレスとイミダゾールジペプチドのレドックス代謝との関係を解析した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、28年度に計画していて実行できなかった、システイン(2-システイニル型)、グルタチオン(2-グルタチオニル型)、ホモシステイン(2-ホモシステイニル型)2-チオ型について解析する。いずれの化合物も②イミダゾール化合物のレドクス代謝物の調製はできているので、同様の方法で安定同位体アミノ酸を用いて安定同位体標準物質を合成し、④HPLC-タンデム型質量分析装置を用いた多重反応モニタリング法による定量的解析法の確立を行う。その後当初の予定通り、⑤生体内ヒスチジンおよびイミダゾールジペプチド-レドックス代謝物の網羅的かつ定量的解析へと進む。上記④で確立した全化合物の定量的解析法を駆使して、内因性に生成するレドックス代謝物を網羅的に定量する。予備的検討でラット臓器(脳、肝臓)抽出液中でのチオヒスチジン、オキソアンセリンなどの検出に成功している。さらに様々な代謝物がどのような制御機構によって維持、代謝されているのかを検討する。具体的には、細胞に酸化ストレスを与える処理(過酸化水素、酸化ストレス誘発性試薬など)をし、レドックスメタボロミクス解析を行う。すでに平成28年度に調製しているカルノシン過剰産生細胞を用いる。応募者は、ラットC6 グリオーマ細胞を細菌リポ多糖で/サイトカイン混合物で処理をすることによって、細胞内に酸化ストレスを誘発させ、ROS/RNSシグナルの二次メッセンジャーである8-ニトロ-cGMP の産生が亢進されることを、定量的に解析している。同様に処理した細胞のヒスチジン-レドックスメタボロミクス解析を行い、ROS/RNS シグナルとの関連性を明らかにする。
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