研究課題/領域番号 |
16K13094
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
長澤 和夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10247223)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グアニン四重鎖 / ライトアップ / リガンド / 大環状ポリオキサゾール / ピレン / 蛍光リガンド |
研究実績の概要 |
グアニン四重鎖(以下G4)は、グアニンが豊富な核酸の1本鎖領域で可逆的に形成される核酸の高次構造の1つである。G4を形成し得るDNA配列は、テロメア領域や、がん関連遺伝子(c-myc, c-kit等)のプロモーター領域を中心に、数万種見いだされている。近年G4形成がDNAの複製、遺伝子の転写調節などの生命現象を直接的に制御することが多数報告されている。一方、これまでに生細胞内でのG4形成を直接確認した例はなく、G4を介した生命現象は、現在in vitroでの観察 にとどまっている。 そこで本研究では、生細胞内でのG4形成を明らかにするために、G4構造を形成したときにこれと相互作用し、同時に蛍光を発するリガンド(ライトアップ型リガンド)の創製を目的とした。 これまでにG4と選択的かつ強力に相互作用する化合物(大環状ヘキサオキサゾール、以下6OTD)の創製を報告している。また6OTDのG4に対する相互作用様式も明らかにしている。これらの知見を基に、6OTDの側鎖に励起会合により蛍光を発する置換基(ピレン)を導入した化合物を、ライトアップ型リガンドとして設計し、その合成を行った。リシン由来の側鎖を有する6OTD誘導体L2H2-6OTDを合成し、側鎖末端のアミノ基にピレンをアミド化反応を介して導入し、目的とするリガンドを得ることに成功した。現在、合成した化合物のG4形成能、安定化能、蛍光特性等の物性について調査をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、設計を行った側鎖にピレンを導入した6OTDリガンドを計画通り合成することができた。合成した化合物は、G4と相互作用し、その複合体を安定化することがわかった。現在合成したリガンドの、G4形成時と非形成時とでの蛍光特性の変化について、測定を行っている。これらの基礎データは、次年度計画する生細胞内でのライトアップ機能評価の基盤となる。今後、更なるリガンドの構造展開を経て、ライトアップ型リガンドの創製を達成する予定であるが、今年度はリガンド創製の基盤を計画通り構築できたことから、現状の段階では研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ライトアップ型リガンドの設計において、前年度検討した励起会合形成による設計に加えて、分子のねじれ解消を駆動力とする蛍光リガンドの創製を計画する。即ち、6OTDを2量体化したリガンドに、G-カルテットとの相互作用を駆動力とするねじれ解消蛍光基を導入することで、リガンドがG-カルテット平面と相互作用する際に蛍光が生じるような分子設計を行う。具体的には、ビアリール骨格を6OTD側鎖近傍に導入したリガンドを合成する。合成した化合物は、CD測定、DNA融解実験、蛍光発光観察を行いin vitroでの機能評価を行った後、生細胞でのライトアップ効果について検討を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
励起会合型グアニン四重鎖リガンドの合成法の確立について、当該リガンドの構造展開が、一部に留まった。これは当該化合物の合成法の確立に当初の予定より少し時間がかかったためである。これらの合成等に係る消耗品費、合成した化合物の分析に関する費用を次年度に使用することとする。
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次年度使用額の使用計画 |
予定している構造展開するための合成試薬購入費用、また合成した化合物を分析するための機器使用料として用いる。
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