研究実績の概要 |
非構造性領域(intrinsically disordered proteins; IDPs)の構造変化と相互作用を制御する合成化合物は新しい創薬への道を拓くブレークスルーとなると期待されるが、IDPsの生物学的な詳細は未だ不明な点が多く、阻害剤すらほとんど見つかっていない。本研究では、概日時計転写因子ClockとBmal1に焦点を当て、両者のヘテロ2量体形成を阻害する化合物をライブラリスクリーニングにより探索する計画を立てた。 ライブラリ結合阻害実験には、ClockとBmal1のDNA結合領域を含む部分配列をクローニングしたベクターを用い、大腸菌から発現して精製した。発現したClockとBmal1を等量ずつ混合するとE-box配列を含むオリゴDNAに対して協同的に結合し、解離定数は報告値とほぼ同等であった一方、E-box配列を含まない対照配列には結合能を示さなかった。またClock, Bmal1とも単独ではdsDNAに結合しなかった。またPEGを添加して分子クラウディング環境を再現すると、DNA結合能が明らかに増加した。このことから、本実験で得た部分配列体はヘテロ2量体を形成し、E-boxに選択的に結合する能力を有することが明らかになった。 続いて芳香環低分子ライブラリを用いて、Clock, Bmal1のdsDNA結合阻害を指標とするスクリーニングを実施した結果、明らかに阻害活性を示す低分子化合物1個を見出した。この化合物について再現性を確認したところ、濃度依存的な阻害活性を示すことも分かった。またライブラリに含まれる構造が酷使した類縁体については活性が認められず、一定の構造活性相関があることも分かった。本化合物は今後Clock, Bmal1阻害剤研究に有用なリード化合物となる可能性が期待される。
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