重水素を置換した4種類の脂肪酸を化学的に合成し、脂質ラフトの代表的脂質であるスフィンゴミエリン(SM)とフォスファチジルコリン(PC)を作成した。これら重水素標識脂質のIRスペクトルを指標にして融解温度の深度依存性を調べた結果、SMおよびPCの二重膜において深度依存的な融解が観測された。SMの融解は、熱測定で求められた脂質全体の相転移温度よりもアシル鎖末端側では低温側で始まること、PCでは比較的同じ温度で融解することが確かめられた。また、コレステロールの添加によって顕著な融解点が消失したことに加えて、SMとPCの深度依存性の相違についても過去の推定を支持する結果が得られた。
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