本研究は、マウス海馬のCA1野、CA3野と歯状回(DG)の活動を生きた動物で同時にイメージングする手法の開発を通して新たな深部脳イメージング技術の確立を目指す。本年度は、蛍光カルシウムセンサータンパク質を海馬に発現するトランスジェニックマウスを用いてマイクロプリズムの埋め込み条件を検討した。従来のプリズムを用いた場合、CA1野の断面からみた錐体細胞をイメージングすることはできたが、プリズム面が狭くCA3とDGまで届かなかったため、より大きなプリズムを使用するように実験条件を変更した。この大きなプリズムを用いると、CA1およびDGと思われる領野の断面のニューロンの形態を同時にイメージングすることはできたが、神経活動に伴う蛍光変化は見られなかった。その原因として、プリズム埋め込みによる海馬への侵襲が考えられた。またCA3を含んだ条件でイメージングするには、海馬の剖出位置を従来の場所から少しずらす必要があることも新たにわかった。プリズムの大型化に伴い、二光子レーザー顕微鏡の対物レンズを、これまでのレンズよりも視野が広く焦点距離も長いものに変えてイメージングしたが、このレンズは従来のものに比べて解像度で劣るため、場合による対物レンズの使い分けが必要であると考えられた。プリズムを脳に長期間埋め込むとコーティングが劣化して実験の継続が困難になってしまうため、コーティング面に保護剤を塗布したところ、良好な結果が得られた。現在のところ、プリズムは少なくとも短期の使用であれば再利用が可能である。今後は、マイクロプリズムと並行して、GRINレンズや光ファイバーを用いた海馬深部のイメージングも試すことと、バーチャルリアリティ環境下のナビゲーション課題を行っているときの海馬深部活動をイメージングすることを計画している。
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