本計画の成果としては主に、1)アルダビール州アルダビール市における互恵活動の検討、2)首都テヘランにおける女性支援を掲げたNGOの活動分析―以上2点が挙げられる。 1)については、家族・親族・コミュニティ・事業所といった多様なレベルとその相互作用について分析を進めた。2)については、女性の起業家育成の活動に注目し、経済的エンパワメント向上の官民連携モデルの最新動向の把握に努めた。 近年は国際情勢の緊迫化やそれに伴うマクロ経済の悪化など、市民生活は不安定性を増しており、そうした社会情勢から現地では人的資源としての女性の活躍に大きな期待が寄せられている。1)では伝統的な社会関係をベースにした慈善活動が、2)ではプロジェクト・マネジメントや起業家論などをベースにしたNGO活動が、基礎的教育や職業訓練など教育機会の拡充、ひいては女性の経済的エンパワメントに貢献している様子が確認された。 特に2)については、イラン女性省と笹川平和財団の国際共同プロジェクト「女性起業家比較研究:イラン-日本」に参加することで、日本とイランの国際比較研究が実現した。社会状況が大きく異なる両国ではあるが、日本との比較検討を通じて、イランにおける女性起業家へのアンケート調査、支援に関する政策体系の評価と改善策の提言などを行うことが出来た。本研究の学術的な知見の一部を、プラクティカルに活用できたことを強調したい。この成果については、2019年6月に書籍としてまとめた。 以上の成果の補足として、2019年10月にはイスファハーン州カーシャーン市で1)の内容との比較を目的とした調査を行った。現地特有の性別役割規範と女性の活動の相互作用については、今後も検討を重ねていきたい。
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