研究代表者の赤嶺淳は、これまで十分にあきらかにされてこなかった青森県からの北洋捕鯨ならびに南氷洋捕鯨へ出漁した出稼ぎ者について、地元の新聞や関係自治体に残る史資料を渉猟するかたわら、現在は八戸市と合併している旧南郷村を中心に旧大洋漁業の捕鯨船に乗っていた人びとの個人史の採録をおこなった。また、八戸市が旧南郷村の地域おこしを目的に2018年10月20日から11月11日まで開催した南郷アートプロジェクト「なんごう小さな芸術祭」の一環として、中屋敷法仁氏が脚本・演出した『くじらむら』(10月27日・28日)において、中屋敷氏とトークショーを担当し、当時の時代背景や南氷洋捕鯨の、日本の水産業における位置づけ、昨今の捕鯨問題の展望について解説した。『くじらむら』の観劇者のほとんどが、かつての捕鯨者の関係者であり、かつてを思い出し、涙する人も少なくなかった。この事実は、捕鯨が地域史に根付いていることを示唆しており、あらたな史実の発掘が課題となった。中屋敷氏との議論のなかで、地域史を主題とする演劇が地域おこしの手法として有効であることが確認でき、さらには、日本各地に脈付いている市民劇団活動の存在を知ることとなった。研究成果の還元方法のひとつとして、積極的に協働すべきことと考えている。研究分担者の椙本歩美は英国バッキンガム大学客員研究員として同大学に在籍し、これまで行ってきた秋田県の農村研究について、英国および米国のセミナーや国際学会で口頭発表を行うとともに、英国の農村の労働状況について現地調査を行った。海外での研究を通して、秋田の農村や季節労働者について理解を深めるための新たな視点や概念を学ぶことができ、本研究を深めるうえで有意義な活動を行うことができた。
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