本研究は、課題が山積している資本主義の現状を打開するための有力な参照軸として、イスラーム経済知に着目し、それをよりよい地球経済の未来の構想に資するための知の普遍化を試みることを目的とするものであった。3年間の研究期間を通じて、イスラーム金融およびザカートと呼ばれる義務的喜捨行為に着目し、現地調査を交えながら、これらのイスラーム経済実践を支えているイスラーム経済知の特徴を解明し、そうしたイスラーム経済知を普遍化し、日本を含む非イスラーム世界における同様の制度やシステムの構築可能性を探究した。 現地調査については、エジプト、インドネシア、マレーシアを中心に実施し、イスラーム金融やザカートの担い手に対する聞き取り調査および関連資料の収集を行った。こうした研究代表者による現地調査データの解析や資料分析に加えて、第三者的視点からイスラーム経済知の特徴と非イスラーム世界への適用可能性に関する意見を請うため、イスラーム経済研究以外の研究者が参画する「イスラーム経済知の普遍化」研究会を実施し、幅広い視野からイスラーム経済実践やイスラーム経済知を捉え直す機会を設けた。 以上の研究活動の成果については、専門分野以外の研究者や一般市民に広く還元することをめざし、学際的な研究書や一般向け図書の刊行に注力した。前者については、日本語書籍2冊、英語書籍1冊に寄稿し、後者については、日本語書籍2冊を研究代表者の単著および編著として刊行した。また、市民向けのセミナーや講演会も実施し、一般市民とも問題の共有・意見交換を積極的に行った。
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