研究課題/領域番号 |
16K13123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 知 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (20452287)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地図 / 画像アーカイブ / 景観変容 / ICT / カンボジア / アンコールワット |
研究実績の概要 |
本研究は、地図・航空写真のデジタルデータを用いた3D地図画像アーカイブ化技術の構築と整備を、東南アジアとくにカンボジアの研究機関と共同で進め、研究資源のグローバルな共有という国際化時代の人文社会科学の課題を実現するしかけを考案することをねらいとする。
本年度は、当初の計画通り、京都大学東南アジア地域研究研究所が所蔵するWilliam Hunt Collectionsのデジタル画像のなかからカンボジアで撮影された約100枚を抽出し、それを対象とした共同研究を現地の研究機関とともに立ち上げた。同コレクションのカンボジア関連の写真は、アンコールワット遺跡群の周辺地域に集中している。よって、同遺跡群一帯の総合的な調査と開発を目的に設立されたカンボジア政府機関であるAPSARA Authorityにカウンターパートを依頼することにした。
具体的には、2016年7月に代表者がカンボジアのAPSARA Authorityを訪問し、William Hunt Collectionsのカンボジア関連の航空写真データを紹介し、それをもとにした地域景観の変容に関する共同研究の開始を発案し、受理された。11月には、デジタル化された航空写真データのモザイク画像の作成および同画像を用いた3D地図画像アーカイブの作成能力を持つ専門家を、APSARA Authorityに派遣し、アーカイブ構築のための技術的要件について意見交換を行った。さらに、2017年1月には、同専門家を再びAPSARA Authorityへ派遣し、同機関の若手スタッフを対象に1週間のアーカイブ技術習得ワークショップを実施した。また、アンコール遺跡群周辺地域を訪問し、アーカイブ化した画像類を用いた景観変容調査の実施のための予備的情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に最適な現地カウンターパートを選び、共同研究を立ち上げることができた。カウンターパートとは3度にわたる計2週間弱の時間を利用して、地図・航空写真のデジタルデータの新しい利用法について意見を交換し、カンボジア・シエムリアップ州にあるアンコール遺跡群周辺地域の景観変容の調査に向けた準備を行うことができた。また、共同研究の推進のためには、現地のカウンターパート機関のなかに、地図画像のアーカイブ化処理技術をもつ人材を育成する必要があるため、現地の若手スタッフを対象とした技術移転のためのワークショップも行うことができた。 William Hunt Collectionsの航空写真コレクションがカンボジアの他にカバーするタイ、ミャンマーなどの研究者との本格的な交流までは発展させられていないが、研究を実施する上では不足のない共同研究体制を整えることができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、APSARAA Authorityと、William Hunt Collectionsの航空写真画像データを共同利用する制度的な体制づくりをよりいっそう推進する。同時に、地図画像データのアーカイブ化技術の実習を、APSARA Authorityの若手スタッフを対象にさらに実施する。 次年度はまた、コンピューター上に構築した第二次世界大戦前後の時期のアンコールワット遺跡周辺地域の景観を携えて、実際の現場を現地の研究者とともに踏査し、景観変容に関する調査を行う。そして、地図画像データの構築から、現地のフィールドワークまでの一連のプロセスを再検討し、問題点を含めて、研究成果として公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、京都大学東南アジア地域研究研究所が所蔵するWilliam Hunt Collectionsの航空写真デジタルデータを用いて研究体制づくりと、共同研究の推進をおこなった。同デジタルデータは、第二次世界大戦前後の時期の地域景観の検討を可能とする。本研究は、景観の変容の解明を目的とするため、上記のデータと比較に耐える現代の航空写真デジタルデータを入手し、比較作業を行うことが必要である。この点は、カウンターパートとするAPSARA Authorityのイニシアチブで進めるよう準備をしたが、今年度中に必要なデータの購入にまで至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
景観変容を分析する上で必須となる、調査対象地域の近年の航空写真データ類の購入に必要とされる諸経費として使用する計画である。
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