本研究は、国際化時代の研究資料の共有化と活用に資する挑戦的活動として、京都大学東南アジア地域研究研究所地図室が収蔵する第二次世界大戦期の大陸部東南アジアの航空写真コレクションWilliam Hunts Collectionの新たな利用方法を、カンボジアの研究機関との共同研究の形で検討した。航空写真は、従来印画紙のまま専用のボックスに収納されてきたが、高解像度のスキャンを経てデジタル画像化することで、複数の機関に跨がる研究者による共同利用の便宜を開くことが出来る。本研究はさらに、そのデジタル画像を、コンピューター上で3D画像アーカイブ化することにより、航空写真が秘めた地域情報の広汎な利用可能性を開くことを試みた。具体的には、William Hunts Collectionの8000葉あまりの航空写真のなかから、カンボジアのアンコールワット遺跡群を中心とした地域を撮影した約200葉を限定的に抽出し、アンコール地域を管理するカンボジア政府機関であるThe APSARA Authorityの研究者をパートナーとして、その画像を有効に利用する方法を共同で研究した。昨年度は、AutoCADソフトウェアを利用した3D画像アーカイブ構築の専門家をThe APSARA Authorityに派遣して技術講習を2度実施した。今年度は、現地の短期訪問とメールでの連絡を通じて画像データのモザイク化の作業を進めた。そして、2018年2月28日に京都大学に関係者を集め、総括のセミナーを開催した。セミナーでは、ArcGISを利用して完成させた1940年代のアンコール遺跡地域のモザイク画像が初披露され、地域の景観変容研究における活用の可能性などを討議した。
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