研究課題
地域研究の視点に立脚したエコヘルス・アプローチの有効性を実証し、メコン河の沿岸でも唯一ラオス南部にだけ存在する寄生虫疾患、メコン住血吸虫症の効果的かつ持続的な対策手法の開発に結び付けることが本研究の目的である。最終年度の平成29年度は、対象地域で住民の検便と質問紙調査を実施し、有病率ならびに感染リスクファクターを明らかにするとともに、効果的な集団投薬の方法を検討した。検便の結果、小児4.0%、成人12.9%の感染が確認された。一方、質問紙調査の結果、メコン住血吸虫の認知度が小児・成人ともに低いことがわかった。同地域ではこれまで繰り返し集団投薬が実施されたが、それにもかかわらず、今回の検便でも高い有病率が明らかになった。すなわち、感染症自体の存在が十分認知されていないため、繰り返し投薬しても、繰り返し感染が起こっていることがうかがえる。このことは、集団投薬がそれ単独では有効な対策になりえないことを示している。対策が最大限の効果を上げるためには、集団投薬に加え、健康教育や衛生環境改善など、住民の生活生態に働きかける統合的なアプローチが必要であり、化学療法に極度に依存せず、住民の生活環境ならびに環境意識の改善を並行して進めることが重要という結論を得た。この研究結果は平成29年10月にラオス・ビエンチャンで開催された「ラオス保健研究会議」で発表し、エコヘルス・アプローチによる対策研究の好例として出席者から高い評価を受けた。
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J. Acta Parasitol.
巻: 62 ページ: 393-400
10.1515/ap-2017-0047