メコン住血吸虫症はラオス南部に固有の寄生虫疾患であり、地域の生態系と住民の生活パターンのなかに深く根を張っている。集団投薬だけで制御するのは限界があり、地域研究の視点をふまえたエコヘルス・アプローチが必要である。本研究は対策手法の開発に向けて、感染の実態解明と過去の対策の検証を行った。検便の結果、集団投薬の直後にもかかわらず、依然高い有病率が確認できた。また住民の質問調査では、原因や予防法がほとんど知られていないことがわかった。さらに集団投薬の管理に不備があり、過去の治療効果を追跡できなかった。この研究により、健康教育や衛生環境整備に加えて、個人IDに基づく長期観測の必要性が明らかになった。
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