研究課題/領域番号 |
16K13127
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
早瀬 晋三 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (20183915)
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研究分担者 |
秋道 智彌 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (60113429)
平岡 昭利 久留米大学, 文学部, 研究員 (90106013)
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70337757)
新井 和広 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (60397007)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海域 / コモンズ / 紛争 / ヨーロッパ海域 / インド洋 / 海域東南アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、2018年度からの本格的研究の準備として5つの班(総括、ヨーロッパ海域、インド洋、海域東南アジア、日本周辺海域)を設け、それぞれ歴史と文化、社会を念頭に、紛争の基層的原因を考えるとともに、これまでどのようにして紛争を解決してきたのか、あるいは紛争を回避してきたのか、その知を探ることを目的とする。 総括班は2016年5月28日に早稲田大学で第1回研究会を開催し、本研究の目的を確認し、キーワードである「コモンズ」について共通の認識をもった。また、各班の活動計画を報告し、共通に議論できることについて検討した。11月12日に京都大学で第2回研究会を開催し、総括班の分担者による3つの報告(「海のコモンズ論-人類学の視座」「ペルシア湾の真珠採りと海賊と石油」「アホウドリと日本人の太平洋進出」)を手掛かりとして、今後の本格的研究について、意見交換をおこなった。 ヨーロッパ海域、インド洋、海域東南アジアの3つの班は、それぞれ1~2回の研究会を開催し、それぞれの班の研究計画、ほかの班との連携について議論し、理解を深めた。また、数人の班員は11月12日の総括班の第2回研究会に出席し、本研究の全体像を理解するとともにほかの班との連携について意見交換した。 日本周辺海域班については、現在領土問題に発展している尖閣諸島周辺海域および南シナ海で戦前から日本漁民などが活動をしており、とくに台湾漁民とは戦後も共同で漁業に従事していたこともあることから、その歴史的過程や現状について沖縄県立図書館等で調査した。また、南シナ海においては、フィリピン人やベトナム人などの零細漁民が現在でも協力して漁業に従事していることから、その情報の収集をはじめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の関係から総括班2回、各班1~2回の研究会をもつことしかできなかったため、関連学会や研究会でメンバーが参加する機会を捉えて、意見交換をおこなった。2017年秋に本格的な研究のための申請をおこなう準備を順調に進めることができた。また、2018年度からはじめる予定の本格的な共同研究で、充分な活動資金が得られなかったことを考え、それぞれの班でその対策を考えはじめている。班員の研究意識もたかまっている。分担者の研究活動も、それぞれ順調に書籍、論文、内外の学会での報告などをおこなっている。これまでの研究成果をいかして、共同研究に臨む準備を着実に進めている。 はじめ日本の海域研究のデータベースを作成することを計画したが、日本だけでなく、海外の研究者の関心も高いことから、尖閣諸島周辺海域および南シナ海での漁民の活動に注目することにした。漁民は大船団を組んで商業的漁業をおこなっているものではなく、家族の生活のために零細漁業に従事しているフィリピン人、ベトナム人、台湾人で、その基礎資料を収集しはじめた。中国と韓国、中国とインドネシア、ベトナムとインドネシアなど、黄海、東シナ海、南シナ海と広範囲にわたって漁業関連の問題が起きており、広い視野での考察ができるよう取り組む。 なお、代表者の早瀬が、2016年10月に「WASEDA ONLINE」で「紛争の海からコモンズの海へ」と題して、日本語と英語で「オピニオン」を発信した。フィリピン、アメリカ、ブラジルの研究者、大学院生などからの問い合わせがあり、今後連絡を取りあって準備を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度秋の本格的研究への申請を念頭において、それぞれの班で研究会を開催する。総括班では、7月22日に国際法をめぐる問題について議論し、われわれの共同研究のオリジナリティについて意見交換する予定である。また、各班のこれまでの成果と今後の予定を確認し、それぞれの班の本格的共同研究での計画、およびほかの班との連携について協議する。その後、メールでのやりとりを中心に申請書の作成に取りかかる。 各班は、申請までにすくなくとも1回は研究会を開催する。また、関連する学会に出席する機会を利用して、意見交換をおこなう予定である。 これまでの研究成果を充分にいかすために、1.海域の所有・専有形態に関する歴史的変化、2.海域の資源利用に関する漁業者間の慣行と国家法との相克、3.交易・通商に関する地域のとりきめをめぐる法令と覇権、4.海賊行為と違法操業、密貿易に関する取り締まり、5.国際法の浸透と慣行との齟齬に関する事例研究などを具体的テーマとして検討する。また、具体的に基礎研究と臨床研究の共同研究ができるテーマを絞り、紛争の根本的問題を探り、解決のための提言をおこなうことができるようにするための意見交換をおこなう。 本研究では、これまでの国家間の紛争を解決する知識を充分に理解したうえで、今日の問題に対処できる学知を模索するため、現在実際に起きている紛争の現場からの声を重視し、「世界性、総体性、持続性(現代性)」「グローバル(世界)、リージョナル(広域圏)、ナショナル(国家)、ローカル(地方)」といった枠組みで紛争を相対化して、基礎研究を現実の紛争の解決のための臨床研究に結びつけることを考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者が国際学会に出席するために研究会に出席できなくなったり、家族が急病で研究会に出席できなくなったため、2人分の旅費が未使用になった。
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次年度使用額の使用計画 |
総括班と3つの海域班の研究会に、相互に出席するために使用する。
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