研究課題/領域番号 |
16K13134
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 晶子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40361589)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジェンダー / セクシュアリティ / クィア / フェミニズム / インターセクショナリティ / 社会運動 / 文化理論 |
研究実績の概要 |
当該年度は、集団の政治における諸差異の共存と連帯の可能性の追及について、特に理論的な側面からの研究を遂行した。具体的には、90年代初頭からのクィア理論とその背景となったアクティヴィズムとの双方に内包される普遍性への志向と個別の差異の主張との緊張関係を辿り、それが2000年代以降のLGBT主流化とそれに対する批判的スタンスを維持してきたクィア理論においてどのように展開されてきたのかを跡付けた。この成果は、5月の政治思想学会のシンポジウム「近代の統治権力とアイデンティティ・他者」及び6月の日本女性学会シンポジウム(それぞれ招待登壇)において報告を行った。また、具体的なアクティヴィズムにおける連帯への模索とその困難について、同性間パートナーシップをめぐる日本での動きとそれに対する道徳的保守の反応の分析を中心として、ドイツ・デュッセルドルフ大学にて開催された国際学会で報告を行った。また、年度末には、米国から研究者を招聘して大規模な公開シンポジウムを開催し、それに加えて、マイノリティの連帯の可能性とその困難を中心に研究会を開催して議論を深めた。さらに、2018年後半から日本語圏においてもその存在が明らかになりつつあったトランスジェンダー排除を唱えるフェミニズムについても議論を行い、トランスナショナルなバックラッシュとそれに対する同じくトランスナショナルな連帯の可能性について意見を交換した。2018年度は、本務校において予想外の大きな役職を務めることになり、十分な時間が取れなかったため、研究機関を一年延長して2019年度を最終年度としてこれまでの研究の取りまとめを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校において予想外の大きな役職について仕事をすることになったこと(2018年度単年)、及び年末の海外研究者招聘関連で大きな時間を取られたために、今年度を持って研究の最終年度とすることができなかった。研究経過の取りまとめについては、2019年度を最終年度として行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究予定には含まれていなかったが、研究の理論的射程と重なるところがあるため、2018年度後半より目につくようになってきたオンライン上のトランスジェンダー差別への考察を組み入れつつ、研究の取りまとめを行う予定である。 6月に国際基督教大学で開催されるシンポジウム、及び7月にオランダで開催されるジェンダーと政治学会で、バックラッシュと保守側の連帯にも言及しつつ、差異を含む連帯の具体的な様相について報告を行い、この結果を論文にまとめる予定である。また、11月にはUCバークレーの招聘を受けてそちらで研究交流を行い、12月にお茶の水女子大学で開催予定のトランスジェンダーに関する国際研究会でその成果を改めて取りまとめる予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学業務のために2018年度を最終年度として研究の取りまとめを行うことができなかったため。 2019年度に研究交流や学会出張のために利用する予定である。
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