日本国内の公立学校の教員採用試験について、文献資料と県教育委員会への調査・関係者へのインタビュー等に基づき、教員採用試験適性検査におけるMMPI利用の実態と問題点を明らかにした。MPI(縮小版のMINI-124を含む)を「テスト・スタンダート」を基準として分析した結果、大項目6のうち5で、基準から逸脱がみられた。特に、性的指向や性別違和・宗教など高度のプライバシーに関わる質問が含まれること、第5尺度(Mf尺度、男性性/女性性尺度)の妥当性に大きな問題があることを見いだした。2013年度採用試験以降、MMPIの利用が減少し、2018年度までに廃止・置き換えられた。なお一部の都道府県警察官の採用試験においては継続している。医学部入試における適性検査においては、1つの医大でMMPIが用いられていた(現在利用廃止)ほか、プライバシーに関わる出題が2020年度入試においてもなされている。入試や採用試験で、倫理的・方法論的課題が十分吟味されないまま、一部で利用が続けられている実態を明らかにした。 性的指向・性自認に関するジェンダー質問のあり方について、別の研究プロジェクトと協力して、グループインタビューやヒアリング、郵送調査、web調査を行い、日本における適切な質問方法を明らかにし、今後の標準的な調査法についての基盤を構築した。 産学連携の「オフィストイレのオールジェンダー利用に関する研究会」により、トランスジェンダーとシスジェンダーの双方に対して量的・質的調査を行った。「自認する性はグラデーションである」というジェンダー・スペクトラム(連続性)の存在を実証するとともに、トランスジェンダーの割合は定義により大きく異なること、トイレ利用についての意識と実態を明らかにした。 加えて、学校の教科書や新聞記事についても、性的指向・性自認に関する記述の動向や問題事例を調査収集した。
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