研究課題/領域番号 |
16K13139
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
柘植 あづみ 明治学院大学, 社会学部, 教授 (90179987)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生殖技術 / 生政治 / 卵子提供 / 不妊 / 卵子 / 人工妊娠中絶 / 優生保護法 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
1)日本の生殖をめぐる国家による制度と個々人の生殖に関する主体的な決定に関するせめぎあいが生じた事例として、優生保護法成立前の「不法妊娠」と呼ばれる戦時下暴力による妊娠と人工妊娠中絶が違法である時期に「女性のため」と「国家のため」の両義性をもって秘密裏に行われていた人工妊娠中絶について、2次資料を中心に史料収集して、研究を行い、共著書に執筆した。2)過去に実施したアメリカでの卵子提供によって子どもをもった人たちへのインタビューデータを、この科研費プロジェクトのテーマを主として再分析し、論文にまとめた。3)日本において卵子提供によるARTなどの医療を実施する側(医療者)、実施をサポートする側(看護師、ソーシャルワーカー)へのインタビュー調査を行った。また、卵子提供によって子どもを得た人へのインタビュー調査への協力を得た。それについてはゆっくりだが、協力者を得て調査を進めている。4)研究成果を学会や論文で公開する実績はあげている。 以上から、生殖に関する意思決定が、その時代や地域の制度以外に、文化、その個人が経験してきた家族形態、生殖に関する経験などと密接に関連していることを深く理解し、それを成果としていかに表現していくかについて検討しながら論文や学会発表を行ってきた。さらに、国が何を根拠に生殖に関する医療技術を規制するのか、その根底にいかなる価値規範があるのを明らかにすべく深いインタビュー、厚い記述を心がけてきた。それを丁寧に分析した業績を日本語と英語の両方にて公表する作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵子提供によって子どもをもった人たちへのインタビュー調査では、協力を得るのが難しく、研究目的を丁寧に説明して信頼関係を築いてから協力を得ているため、当初の目的人数に達していないが、少しずつ進展している。 専門家へのヒアリングは、専門家が多忙なために、なかなか協力が得られないが、少しずつ進んでいる。 先行研究資料の検討、過去に入手したインタビューの再検討は予定どおり進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
卵子提供によって子どもを得た人へのインタビュー調査はこのまま進める。 日本での卵子提供に関する専門家の意見についてのヒアリングを積極的に進める。 最終年になるため、研究成果を学会発表や論文発表などで公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が若干遅れていたことと、これまで研究協力を得るのが難しかった研究協力者が若干名だが可能になり、その調査協力日時の設定が次年度になった。研究成果の公表に国際学会での発表を行いたかったこと、さらに国際共同研究の可能性を探るために、時間が必要になった。
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