今年度は以下のような活動を実施した。1.精神医学における多様なアプローチの関係を考察し、その成果を『精神神経学雑誌』に論文「バイオサイコソーシャルモデルと精神医学の統合」として公刊した。2.精神医学の科学性について考察し、第114回日本精神神経学会学術総会において「精神医学の多元性と科学性」として発表した。3.ピーター・ザッカー『精神病理の形而上学』出版記念シンポジウムで、精神疾患の定義をめぐるザッカーの議論を批判的に検討し、「本質主義的実在論と社会構成主義のあいだ」という題目で発表を行った。4.米国からピーター・ザッカー氏を招いて、東京大学駒場キャンパスでザッカー氏の著作に関するシンポジウムおよび精神医学の哲学の諸問題に関する国際ワークショップを開催した。シンポジウムでは、’Between Realism and Social Constructivism’という題目で発表を行った。6.金沢大学の佐々木拓氏を講演者に招いて、依存症についての研究会を開催した。 研究期間全体を通じては、以下のような成果が得られた。1.一連の文献研究および研究会の開催を通じて、精神疾患の定義、分類方法、精神医学における様々なアプローチの関係など、精神医学の理論的基礎に関してどのような原理的・哲学的な問題があり、どのような論点や立場が存在するかが明らかになった。2.東京大学で開催されているPPP研究会や京都大学で開催されているフンダメンタへの参加を通じて、哲学的な問題に関心のある精神医学研究者との人的ネットワークを構築し、日本精神神経学会におけるシンポジウムなどの形で、研究交流の成果を発表することができた。3.ピーター・ザッカー氏の招聘を通じて、英語圏における精神医学の哲学研究者との人的ネットワークの構築に着手することができた。
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