本研究は、思想のテクストを視覚化および可触化する方法論から哲学・思想の専門教育をより高度にするとともに、その成果を研究に還元することを企図してきた。最終年度となる平成30年度は、本研究課題の締めくくりとして、本研究における手法の蓄積を人文系の研究に広く展開できるようにする実践を進めた。 具体的には、これまで連携を取ってきた他の研究者の資料のうち、インドの思想家スワミ・ヴィヴェーカーナンダ(1863-1902)のComplete Works of Swami Vivekanandaから第1巻と第3巻の一部を取り上げ、spiritualityという語を軸に、関連する語としてreligion、teacher、master、materialという5概念を視覚化と可触化により検討した。その結果、ヴィヴェーカーナンダのテクストでも視覚化も可触化もこれまで同様に適用でき、隣接領域への応用が可能であることがわかった。しかし、分析に用いるソフトウェアがオンライン、スタンドアロンどちらもトラブルになりやすいといった問題点も明らかになった、もっとも、これはおそらく文字コードの問題であり、事前のデータ処理で解決できると思われる。また、今回検討した5概念の場合では十分な関係性が明示しにくいという課題もあったが、これは分析対象に由来する要因であり、本研究の価値を減ずるものではないであろう。 いずれにせよ、本研究が研究代表者の専門を越えて人文系の学問に展開できることを明らかにしえたのには、今後の研究のさらなる発展に向けて重要な意味があると思われる。
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