研究課題/領域番号 |
16K13158
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
保坂 俊司 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80245274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シク教の平和思想 / ナーナク / アマルダス / 宗教と文明 / 文明の祖型としての宗教 / 大乗仏教都市苦境 / 文明融合思想としての空 |
研究実績の概要 |
本研究は、シク教教団の実質的な確立者である第三代グルのアマルダスの生涯やその背景、さらには実質的な活動に関して、聖典『グル・グラント・サーヒブ』のアマルダスの言説をを中心に検討するものである。その成果は既に日本宗教学会などで発表してきたが、昨年は拙著『情報と宗教ーーグローバル時代の宗教と文明』(北樹出版社2018年)において、その成果を公表した。更に、2019年度中に中央大学出版会から『アジア型文明の21世紀的意義』(仮題)として、「宗教が国家を作る時(あるいは宗教教団が国家を作るメカニズムの事例研究)」(執筆中)において、シク教団の原初よりシク教国家(カリスタン)形成過程におけるシク教の初代からアマルダスを中心に検討し、その成果を発表する。 また、アマルダスの存在を16世紀における西北インドのヒンドゥー・イスラム共生社会形成の先例と位置づけることで、宗教教理が如何に、他宗教との共生、それも筆者のいう、冷たい共生ではなく、真に相互理解と尊重を基礎とする共存共栄社会形成に関する智恵を、この思想や行動から吸収できる。つまり、現在社会が直面するイスラム教との平和的共存社会の構築に、どのような思想的、文化的、宗教的現実的諸作がある化、その実例を彼の、さらにはシク教の研究から見いだすことが出来るのである。特に、アマルダスは信仰を地涌に認めつつ、現実生活における平和的な共同体社会形成を目指し、初代ナーナク以来のヒンドゥ-・イスラム共生構造の構築を目指し、それがある程度成功を収めた実績がある。この点は、更に多方面からの検討が不可欠となり、今後の研究の継続が必要である。また、報告者のシク教研究の成果は、2019年4月16日(火曜)インド大使館のビベーカナンダホールにおいて、「シク教思想の21世紀的意義」と題する記念講演において、駐日インド大使閣下他列席において、発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シク教の研究は、インドのシク教徒以外では余り注目されておらないために、多様な研究の領域を個人的な努力で埋めなければならない点が研究の進捗度を多少緩慢にている。しかし、インターネットやSNSなどにより直接現地の研究者と交流が出来るために、かなり研究の効率が上がってきていることも事実である。本件は最終年であり、これまでのシカと今後の課題を整理して、その成果については、著作(既述の中央大学出版会からの出版が確保されている:義務)において発表する。また、インド大使館での記念講演、学会、あるいは一般の教養講座のようなところからの講演依頼もあり、成果の発表や普及に一層精力的に活動する。また、南・東南アジアにおけるシク教団の現実の調査なども行ったので、その成果もふまえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、先ずシク教という宗教の持つ、宗教融和思想とその実現のための具体的な施策に関して、今日的な意義を明らかにすること。さらにシク教をインド宗教史全体に位置づけること、特に、仏教徒の関係を思想的のみならず、文明論的な意味で両者の共通性、というよりも普遍性を明らかにしたい。というのも、仏教とシク教は、インド発の二つの世界宗教であり、特に仏教の中でも大乗仏教は、シク教の教団勢力圏とその領域がオーバーラップし、しかも開祖ナーナク、アマルダスと仏教的な思想の影響を直接・あるいは間接t系に受けたことが指摘されている。この点は、宗教思想的に興味があるが、それ以上に当該地域における異宗教、異文明の融和・融合の伝統という視点から、大乗仏教の発生と比シク教の発生を比較文明的に比較研究することは、シク教研究のみならず、日本とも関係の深い大乗仏教成立の思想的なダイナミズム解明に大きく寄与できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
更に研究の期間を延長し、資料整理などの必要が生じたため。
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