最終年度の令和元年度には、3年間の研究活動の成果を論文等により出版することに注力した。 (1)社会学的アプローチと認知科学的アプローチの統合を意識しながら、論文「芸術活動における共創の再考―創造とエンパワメントのつながりを探る」を出版した。本論文では、複数の人たちが関わる芸術活動における創造への関わり方やプロセスを再考した上で、「創出」と「語りなおし」に着目し、創造とエンパワメントの関係を探った。その結果、個々の参加者が生かされる創造の方法を「創出」し、その方法で創造を行うことができた場合、「語りなおし」の契機が生まれ、創造とエンパワメントが両立することが示された。 (2)鹿児島市の社会福祉施設しょうぶ学園の “otto & orabu” の活動について、conviviality (共生)という視点からまとめた英語の論考を出版した。“otto & orabu” は、「健常者」と「障害者」から成る音楽アンサンブルだが、「健常者」の音楽のあり方が基準となっていないこと、創作活動が民主的でプロセスを重視するものであることなどの特徴があった。音楽アンサンブルにおいて、健常者と障害者のどちらか一方が優越的にならないよう、柔軟にバランスがとられることで、音楽的に conviviality が達成されていることが示唆された。 (3)昨年度出版した『はじめての "社会包摂×文化芸術”ハンドブック』での試みを論文にまとめて出版した。本論文では、ハンドブック作成のプロセスを記述することで,政策と実践をつなぐ中間言語を生み出す意義や具体的方法を示した。 (4)昨年度出版した『はじめての "社会包摂×文化芸術”ハンドブック』の英語翻訳を進めた。刊行は令和2年度の予定。
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