【近代における仏教美術収集関係資料の調査】近代を中心とする仏像の流通を把握するために、益田孝(鈍翁)、小泉三申、武藤山治、松田福一郎など明治・大正・戦前期における著名な古美術収集家で仏教美術を収集した人物について、資料収集を行った。特にその収集内容を伺い知ることが出来る売立目録などの内容の調査を初年度から引き続き実施し、主に仏教美術のうち、彫刻(仏像)と絵画(仏画、垂迹画)の分野別に分類整理を行っている(一部は実施し、研究終了後も引き続き行う予定である)。その内容については今後、論文または資料紹介などを通じて報告を行いたい。 【流通する仏像を中心とする仏教美術作品に関する調査】戦前期に流通し、現在も収集家や古美術商が所蔵する仏教美術作品について、引続き調査や写真撮影を行った。特に今年度は明治維新前後の「廃仏毀釈」の影響を多く受けたとされる、神道美術を中心に調査研究を行った。神道美術に関しては、神像や本地仏である仏像とともに、数多くの垂迹画、関連する仏画の調査を行うことが出来た。そして國學院大學博物館、国文学研究資料館、国立歴史民俗博物館、名古屋大学大学院文学研究科附属人類文化遺産テクスト学研究センターなどと共催で行った、金沢文庫特別展「顕われた神々―中世の霊場と唱導―」(平成30年11月16日~平成31年1月14日)で、その成果の一端を早速発表することが出来た。特に伊勢信仰、春日信仰、八幡信仰、富士山信仰、日光山信仰、走湯山信仰などについて、新出作品を調査して、その成果も発表することが出来た。展覧会は研究者のみならず、一般の人たちにも好評を得ることができ、科学研究費による成果発表と社会への還元に良いモデルケースとなったと思う。
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