今年度はインド映画の南アジアおよび東南アジアのインド系ディアスポラでのインド娯楽映画の受容にみえる作品選択の動向等について現地調査を交えて検証した。調査地は、チェンナイ(インド)、コロンボ(スリランカ)、バンコク(タイ)、ペナン(マレーシア)、スラバヤ(インドネシア)、メダン(インドネシア)、バンドゥン(インドネシア)にわたり、シネコンと放送メディアを調査した。インドネシアに関しては、インド系移民のほかにインドネシアのムスリムにもインド映画を享受するファン層がおり、俳優等も人気を勝ち得ているという事情がある。しかし、いずれにせよ東南アジアのディアスポラにおいては、インド人(とくにヒンドゥー教徒)にとっての祭事シーズンに上映されることが殆どで、大型作品に偏って興行にかかり、インドの新興新中間層をターゲットにしたような作品が紹介されることはほとんどない。欧米における受容傾向とは極めて異なる事実が確認された。 本研究に関連する上映会兼研究会を、東北大学において2018年度は2回(2018年11月24~25日、2019年2月19日)開催し、参加者らと意見交換を行った。さらに、年度が改まった今年の4月13~14日にも研究会をおこなって成果を総括している。 研究成果は目下執筆中であるが、すでに公刊された関連業績としては、『ブリタニカ国際年鑑2019年版』(ブリタニカ・ジャパン、2019年5月)において、宗教対立等の文脈から注目された『パドマーヴァット』(ヒンディー語、2018年制作)について解説している。
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