研究課題/領域番号 |
16K13184
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤枝 守 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (80346858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発酵(醗酵)音響 / 水中マイク / サウンドインスタレーション |
研究実績の概要 |
初年度では、集音システムの考案と収録方法の確立を中心に実践した。まず、集音システムにおいては、焼酎の発酵時の醪に沈下するためのあらたな水中マイクの設計/製作に取り込んだ。その際に、発酵の収録に最も適した高感度の圧電素子を用いて、醪の特性(高アルコール+高酸性)に対応する養生のあらたにマイクを格納する容器を設計し、また、気泡が直接、マイクの本体に接触しないような形状を考案して、水中マイクの製作が完了した。 その水中マイクの音響特性を検証したうえで、実際の焼酎の発酵時の音響の収録作業を行った。今回は、まず、沖縄の「泡盛」に焦点をあてることにした。その理由は、今回の研究を実践する以前に、九州一円の焼酎のいくつかの蔵元ですでに収録した発酵の音響データがあり、それらの音響特性と比較する必要があったためであった。2016年11月18日から3日間にわたり、沖縄に神谷酒造所、瑞泉酒造、新里酒造の3つの泡盛の酒造所にて発酵音の収録作業を行った。 今回の沖縄での収録において、さまざまな問題点が浮上した。それは、これらの酒造所が近代的なシステムを取り入れた生産形態によっているのだが、温度設定による自動制御で醪を撹拌するために、多くのノイズが発生し、微細な発酵の音響を収録するうえでの妨げとなった。今後は、このような近代的な生産方式によらない酒造所での収録の必要性が求められる。 このような収録作業は、次年度にも継続するが、これに併行して、発酵音の芸術的表現に関しての模索を行っている。現在、大阪にある「+1ギャラリー」において、2017年度に発酵音に基づくサウンド・インスタレーションと、それにともなうパフォーマンスが計画中で、2017年4月に「どぶろく」による発酵音の収録を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酒造所のおける発酵音の収録は、さまざまな予測不可能は事態に直面することが多く、その収録作業もスムーズにいくことが難しいのが現状である。あらたな水中マイクは完成した現時点では、発酵音の収録に適した酒造所の選定をもう一度、再検討する必要がある。その選定においてもポイントは、近代的な酒造の行程ではなく、現在でも、昔ながらの「甕」による焼酎づくりを堅持する酒造所をさがし、その酒造所との収録の交渉などに、今後、やや時間を要すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
発酵音の収録が、次なる芸術表現への布石になるため、まずは、2017年度は、収録にも多くの時間を費やすが、それとともにギャラリーなどとの表現行為の可能性を早急に行う予定である。 現状では、大阪のギャラリーでのインスタレーションやパフォーマンスが計画されているが、東京や福岡での開催を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
焼酎の酒造所におけるさらなる収録作業が必要となるため。
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次年度使用額の使用計画 |
九州一円の「甕」による焼酎の酒造所における収録作業を実施予定。
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