研究課題/領域番号 |
16K13184
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤枝 守 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (80346858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発酵 / サウンド・アート / バイオ・アート / サウンド・インスタレーション |
研究実績の概要 |
本研究「発酵音響における芸術表現への応用」は、「発酵」という生命活動に着目した研究実践である。とくに、焼酎の生産過程におけるアルコール発酵において、その代謝エネルギーの変換によって排出される炭酸ガスの生みだす「音響」が研究のおもな対象としている。この発酵の音響に収録にあたっては、麹カビ菌の作用による酵母に麦や芋などを仕込んだ醪(もろみ)のなかに、特殊に養生加工した水中マイクを沈下して実施してきた。このような発酵状態を音響によって観察するという発想もきわめて独創的だと考えている。さらに、本研究においては、発酵音響に内包された音響特性を解明するとともに、そこに美学的な価値を与えて芸術表現を試みている。 初年度では、集音システムの考案と収録方法の確立を中心に実践した。まず、集音システムにおいては、焼酎の発酵時の醪に沈下するためのあらたな水中マイクの設計/製作に取り込んだ。その際に、発酵の収録に最も適した高感度の圧電素子が醪の特性(高アルコール+高酸性)に対応する養生のあらたに容器を設計し、また、気泡が直接、マイクの本体に接触しないような形状を考案して、水中マイクの製作が完了した。そして、沖縄において、神谷酒造所、瑞泉酒造、新里酒造の3つの泡盛の酒造所にて発酵音の収録作業を行った。この沖縄での収録において、さまざまな問題点が浮上した。それは、これらの酒造所が近代的なシステムを取り入れた生産形態によっているのだが、温度設定における自動制御で醪を撹拌するために、多くのノイズが発生し、微細な発酵の音響を収録するうえでの妨げとなった。そして、2年目においては、このような近代的な生産方式によらない酒造所での収録の必要性が求められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度の問題点として、近代的な生産方式によらない酒造所での収録場所の選定に困難がともない、本年度の収録作業が滞っているのが現状である。それとともに、大阪にある「+1ギャラリー」において、発酵音に基づくサウンド・インスタレーションと、それにともなうパフォーマンスの計画が進行している。この芸術的な手法において、「発酵」による他のジャンルとのコラボレーションが前提となり、その調整に多くの時間を費やし、結果として、研究実践の大きな遅れが生じてきている。現在は、収録作業の進め方をあらたに検証し、また、コラボレーションの手法を試行している段階である。もうすでに、収録のハードウェアは完成しており、収録方法と表現との関係性を模索して状況となり、1年間の研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
延長期間となる本年度は、あらたな発酵音の収録場所を開拓するとともに、これまでの収録記録の音源とともに「発酵音」のアーカイブ化の作業に着手する。それとともに、前年度から進めている大阪の「+1ギャラリー」にて、2019年1月に「発酵音」のよるコラボレーションの展覧会を計画しているが、それに向けての実践に多くの研究時間を費やす予定である。また、そして、その展覧会の報告書の作成やこの研究全体の成果をさまざまなメディアを通じて発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実践の期間を1年間延長したため、その延長期間内において、使用額を執行する予定である。なお、その使途は、成果発表となる展示費用に当てる計画である。
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