本研究は(A)学習マンガの現状と歴史の把握、(B)戦後発展期のジャンル確立過程の特質把握、(C)海外の類似表現との国際比較を行い、学習マンガの全体像を描くことについて問いをたて、歴史や科学知識を伝達する目的で描かれ教育現場で活用されるマンガ、いわゆる「学習マンガ」の表現構造及びメディア史に迫ることを目的としている。これによって、マンガというメディアの社会的位置づけや、教育との関係を分析し、それと連動しながらマンガ表現が導く歴史認識や社会意識の構造を明らかにすることを目指すものである。平成30年度は、(B)戦前から戦後にかけてのジャンル確立過程を分析時期とし、その萌芽期の特質を把握するために、初年度におこなった学習マンガを発行する出版社(学研ホールディングス、小学館、集英社、朝日新聞出版社等)の編集者インタビューを手掛かりとしつつ、戦前の『勉強漫画』に焦点をあて、表現上の特性について検討した。また、この分析結果をもとに、海外の研究者との意見交換もおこなうことができ、単行本としてまとめることができた。さらに、(C)として、韓国等において発行されている学習マンガシリーズにおける表現との比較分析のために、戦後発展期の「伝記学習マンガ」に焦点化した表現分析のパイロット調査を実施した。これら成果の一部について学会発表を行い、今後の本格的な調査のための手がかりを得ることができた。
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