最終年度は、3年間の研究会の成果を次の3つの形態においてまとめ、公開した。 1つ目は、将棋と文学やメディアとの関係について、総目次や出来事などの基礎情報を索引や一覧にまとめた各種データベースを集めた「将棋と文学研究のための基本データ」であり、ホームページ上に公開した。 2つ目は、研究会で発表され、議論されてきた内容をまとめた論集『将棋と文学スタディーズ』であり、これは冊子形態でまとめ、関係研究機関に寄贈した他、すべてpdfで富山大学学術情報リポジトリにも公開した。 3つ目は、2019年1月5日-6日に2日間にわたって開催した「将棋と文学シンポジウム」である。「現代メディアの中の将棋」「近代メディアの中の将棋」「将棋と文学の交錯」の3つのセッションと、「将棋めしの世界とフィクション」「将棋/コンピュータ/物語」「盤上遊戯と小説」「将棋と小説は似ている?」の4つの対談を企画し、のべ23名の登壇者、160名の参加者を得て行われた。文学と将棋の多様で密接な関係を明らかにし、文学を考えるための新たな視座を示した本シンポジウムは大きな反響を呼び、朝日新聞、中日新聞などで報道された。 その内容は多岐にわたるが、将棋が文学の世界と関わりつつメディア上でどのように展開し、また、将棋という要素が入ることが文学やメディアの展開にどのように関わったかという双方向的な関係を、それぞれの時代や局面において具体的に明らかにしたと総括できる。また、近年のブームによって現在メディア上で著しく役割を大きくしている将棋という世界の現在と今後を考えるための手がかりを示すこととなった。
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