研究課題/領域番号 |
16K13193
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉山 欣也 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90547077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ブラジル / 日本文学 / 紀行文 / ブラジル日系文学 / 三島由紀夫 / 島崎藤村 |
研究実績の概要 |
2016年度はサンパウロ大学客員教授として6月より翌年3月までブラジルに滞在し、ブラジルを旅した作家たちがブラジル日系社会と日系文学に残した足跡を検討した。 たとえば1936年にブラジルを訪問した島崎藤村が現地に遺した石碑について、現在も「ブラジル藤村会」が維持と顕彰に努めていることや小説に書かれていることが分かった。本研究のサブタイトルにある「相互交流」にふさわしい事項であり、ブラジル藤村会会長にインタビューを行い、資料提供を受けるなどし、2017年6月にリオデジャネイロで開催されるシンポジウムでその成果を公開する予定である。 この中でもっとも成果を上げたものは三島由紀夫のブラジル(および海外)体験に関してである。三島は1952年に世界旅行に際してブラジルを訪れたが、このことについて論文「三島由紀夫『アポロの杯』におけるリオ、サンパウロ 見て書かなかったこととしての旅行記」(2016年12月、共著『文学海を渡る』三弥井書店)に公開した。また、三島由紀夫のブラジル旅行、世界旅行の意味について、ブラジルおよびイタリアにおいて7回に及ぶ学会・シンポジウムにおける発表、講演を行ってきた。さらに第24回全伯日本語・日本文学・日本文化大学教師学会(第24回ENPULLCJ)/第11回ブラジル日本研究国際学会(11CIEJB)に論文「三島由紀夫の国境認識 アメリカを視座に」を投稿し受理されたほか、イタリアでも既発表論文をイタリア語訳して出版することになった。 このような活動を通して、三島由紀夫を一つの軸にした研究の展開を示し得たとともに、ブラジル日系社会の生んだ文学作品について論文「日本文学の汽水域にて」(共著『言語文化の越境、変容に関する比較研究』2017年1月、金沢大学人間社会学域人文学類)を発表し、さらなる新たな研究への展望を得たことをもって2016年度の成果とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究にはインプット(調査考察等)とアウトプット(論分公開、学会発表、講演等)の両側面があるが、本研究開始初年で論文公開2本、学会誌に公開予定の論文1本、学会(招待講演を含む)・シンポジウム発表4本、講演・ワークショップ等6本)多くのアウトプットを行い得たことは当初の予想を上回る成果であったといえる。また、サバティカル期間と合わせることにより現地長期滞在を行い、多くのインプットに努め、さらにその内容で2017年度のシンポジウム参加などを準備できたことによって、よいサイクルを作り出すことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は6月にリオデジャネイロでシンポジウムに参加することになっており、その際に「研究成果の概要」にも書いた島崎藤村のブラジル体験について報告する予定であることから、その論文化を行う。 さらに、9月頃再度サンパウロに滞在し、ブラジル日系文学について調査を行い、その成果をまとめる。具体的には、現地の日本語文芸誌の詳細な目次目録を作成し、今後だれかが研究を志した際に基盤となるものを作成しておくことと、現地における日本語文学の現在の様相を確認することを行いたい。 そして、それらで得た知見を元に研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度が勤務校のサバティカル研修期間となったため、ブラジル長期滞在が可能であった反面、日本・ブラジル往復旅費および滞在費が科研費で支出不要となったことが大きな要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度および次年度におけるブラジル調査に際して執行する計画である。
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