本研究は文禄年間に始まる日本の古活字印刷の淵源を、韓国における朝鮮活字版研究の最新の成果から明らかにしようとするものである。近年、この問題をめぐってはキリシタン版に起源があるとの説が有力になってきているが、その背後には学界全体における朝鮮活字版に対する知見の不足が存在する。文献のうえから見ても、目下韓国で進展している活字調査の結果から見ても、日本の古活字版の淵源は朝鮮活字版にあると見なすべきである。 こうした成果・知見を日本の研究者にも共有してもらうため、本研究ではすでに2016年2月25日に韓国より黄正夏・清州古印刷博物館学芸室長、李載貞・韓国中央博物館学芸研究官を招聘し、法政大学でワークショップ「朝鮮活字版研究の最前線」を開催した。2017年度の主たる研究は、このワークショップの成果を日本語訳し、報告集を作成すること、当該分野における現時点で最も充実した成果である李載貞氏「朝鮮活字印刷術が日本古活字印刷に及ぼした影響」(『北東亜歴史論叢』第46号、2014年。原文は韓国語)を日本語訳し、当該報告集に付録として収載すること、の2点であった。日本語訳にあたっては、李章姫・法政大学大学院人文科学研究科博士後期課程3年の協力を得た。その結果、2018年2月28日、『科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)報告書 朝鮮活字版研究の最前線』(全123頁)を刊行し、成果の公表を実現することができた。
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