研究課題/領域番号 |
16K13196
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
塩野 加織 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (80647280)
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研究分担者 |
尾崎 名津子 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (10770125)
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 検閲 / 近代文学 / 岩波書店 / GHQ/SCAP / 内務省 / 出版 |
研究実績の概要 |
2017年度はまず、「戦後日本文化再考」第13回研究集会(国際日本文化研究センター共同研究会(代表坪井秀人氏)、2017年6月18日(日)、於・立教大学太刀川記念館ホール)にて、十重田・尾崎・塩野がパネルを組み、それぞれの研究成果を発表した。発表では、「占領期メディア規制と出版文化――プランゲ文庫と岩波書店での調査を中心に」というパネルテーマのもとで、十重田は占領期に刊行された文芸雑誌『近代文学』『新日本文学』『人間』等の検閲事例を挙げ、現在までの検閲研究の動向を示した。尾崎は、前年度から調査を開始した津田事件をめぐる言論規制のありようについて、新たに入手・確認した複数の資料をもとに考察を発展させ、津田事件と岩波書店の関わりや、戦前・戦中の内務省検閲の特色を指摘した。塩野は、メリーランド大学プランゲ文庫での岩波書店関連刊行物の検閲資料をもとに、戦前に刊行された書物が占領期に再版される際の検閲のありようを、岩波文庫の事例をもとに検証した。また、スーパーグローバル大学創生支援事業早稲田大学国際日本学拠点が主催した国際検閲ワークショップ「《若手研究者によるラウンド・テーブル》検閲と文学研究の現在」(2018年1月26日(金)於・早稲田大学国際会議場第三会議室)にて、尾崎が「岩波文庫への検閲について」と題し、研究成果の発表を行った。本研究課題の核となる研究対象である岩波書店の刊行物のうち、内務省検閲を受けた痕跡が残る岩波文庫をリスト化した。それらは現物(一次資料)に基づいて構成されており、確実なデータから岩波文庫に対する検閲の実態を浮き彫りにすることができた。また、これまでの岩波文庫をめぐる様々な言説の真偽を見極めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は主に、各自の設定した課題に即して資料調査をすすめる時間に充てた。その調査結果とそれにもとづく考察は、6月に3名で行ったパネル発表に活かすことができた。これ以外にも、たとえば尾崎は、2018年1月のワークショップでも岩波文庫の調査について発表を行うなど、着実な成果へと結びついている。
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今後の研究の推進方策 |
活動最終年度となる2018年度は、これまでの調査のなかで不足している部分を精査し、その補足調査を実施するのと同時に、十重田、尾崎、塩野が各自の研究の成果をまとめていく。たとえば、2016年度の国際シンポジウムにおける各自の発表や、2017年度の国際研究集会でのパネル発表については、そこで明らかになった課題点についても考察し、論文として発表する。他にも、2017年度に引き続き、岩波文庫に対してなされた検閲処分の実態を成果として公表する計画である。具体的には2018年度上半期に、千代田区立千代田図書館の「内務省委託本」レポートとして発行・HP上で公開され、公に供される予定である。また、戦前の刊行物が占領期に再版された際の検閲や刊行プロセスについてもさらに詳しく調査し、収集データの分析を行うなど、内務省検閲とGHQ/SCAP検閲との連続性・非連続性を実証する研究手法の確立に向けて、プランゲ文庫の調査に取りかかる。岩波書店の出版物を調査するとともに他社のサンプルも収集し、占領期における岩波書店の位相を明らかにすることを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたプランゲ文庫資料調査のための出張が実施できなかったため、次年度以降に繰り越すことにした。
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