研究課題/領域番号 |
16K13198
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
荒木 浩 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60193075)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本古典文学 / 古典教育・研究の国際的戦略 / 自照性 / 投企する古典性 / 大衆文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代・中世を中心とする古典文学や周辺資料(絵巻など)の研究が、今日の国際的な日本研究や文化論の中で、いかなる学術的コンテクストを形成して達成され、貢献しうるのか、という問題について、研究代表者の研究蓄積を基盤として、日本文化研究の未来図にも視界を拓くべく、日本古典文学研究の基層と戦略のありかを探り、分析して、その成果を提示しようとするものである。①日本古典文学の海外での教授システムの把握と構築、②バイリンガル等の教材作成の構想、③大衆文化研究の日本古典文学における応用、④日本古典文学における「世界」と「世界」の中での日本古典文学提示の方法論の確立、⑤対外観の中での日本古典文学史の再構築、⑥自照性の比較文化史的問題という項目を基軸に研究を開発し、日本古典文学の可能性と学術的根拠を問いながら研究を開発する。以上の六つほどの項目テーマを想定する。 28年度は、以下のような研究展開があった。 (1)タイ、ブルガリアでの客員教授という経験の中で、英語・日本語の教材とともに、それ以外の言語を使用する国での日本古典文学教育の推進と教材作成を行った。(研究テーマ①②)(2)日文研の基幹プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」のスタートに伴い、日文研共同研究「投企する古典性―視覚/大衆/現代」を発足させ、本課題研究と連動して、古典研究と大衆文化研究をめぐる通時的・国際的・現代的視点からの考察を開始した。(研究テーマ③④)(3)対外観の中での日本古典文学史に関する論文を発表した。(研究テーマ④)(4)これまでの研究成果をもとにして、日本中世文学の「自照性」に関する比較文化的考察を開始し、学会発表をもとに、その一部を成稿した(印刷中)。(研究テーマ⑥)(5)国際学会・国内学会を中心に、それぞれの研究テーマに即した国内外の専門的研究者との研究交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた研究課題については、海外での客員教授、国内外の学会での研究発表等を通じて、順調に進んでいる。論文も着実に執筆した。また当初より連動を構想していた、日文研の基幹プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」のスタートに伴い、日文研共同研究「投企する古典性―視覚/大衆/現代」を発足させ、古代・中世班のグループリーダーを勤めるなど、総合的な研究計画は予想以上の展開を見せている。ただ、申請当初に構想していたベトナム語との対訳的教科書については、協力体制で作成すべく準備をしていたカウンターパートの事情もあり、早急な対応が難しくなった。この面を考慮して、おおむね順調に推進している、というレベルの自己評価を行った。なお対訳的教材については、ベトナム研究者との情報交換を継続するとともに、28年度、タイ及びブルガリアで行った客員教授としての講義を通じて、個別に実践において作成を試みるなど、調査・研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に推進している計画の目的を達成するために、本年度は、当初の計画に即して、下記を中心に推進する。 (1)国際会議に参加して、研究成果を発表するとともに、参加の海外研究者と研究交流を行い、学会の各セッションを聴講して、研究情報の収集を行う。この点については、28年度の学会での研究交流の中で、ポルトガル・リスボンで開催予定のEAJS(ヨーロッパ日本研究協会)へのパネル発表が構築され、審査を経て採択された。「夢」をテーマに米国の研究者と協働で行う。その他、中国など、海外での研究発表を計画している。(研究テーマ④~⑥)(2)計画当初本年度を想定していた米国東部の大学における研究発表は、2017年3月に一回達成した。その成果の展開を進め、7月に研究会で発表する。(研究テーマ③~⑥)(3)日文研の基幹プロジェクト及び関連研究会の推進を行い関連の絵巻などビジュアル資料をめぐる研究も進める。(研究テーマ③)(4)対外観の中での日本古典文学史というテーマの論文を『今昔物語集』を基軸として整理し、基盤研究への展開と著作化への方針を検討する。(研究テーマ⑤)(5)日本中世文学の「自照性」に関する比較文化的考察を継続し、論文として発表する。(研究テーマ⑥)(6)それぞれの研究テーマに即した国内外の専門的研究者との研究交流を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研申請後、28年度における多くの海外出張が決まった。タイ及びブルガリアでの客員教授が採択され(それぞれ6週間及び2週間)、さらにフランス、ニュージーランド、韓国、米国での国際研究集会や学会への招待が年度を渉って確定した。また28年度からは、日文研基幹研究プロジェクトが採択され、そのグループリーダーとしての責務も重なった。以上により、当初の想定より、日本での通常業務の時間設定が大きく変更を余儀なくされた。ただし海外での活動は、それぞれ科研のテーマと密接に関連するテーマであるため、研究自体は順調に進展したが、出張設定が取りにくかったため、旅費等の予算を中心に、当初の計画とは異なる節減となった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、当初の計画を十全に執行するとともに、申請時には採択が不明で、予算面の懸念があったポルトガル・リスボンでのEAJS発表が採択された。その他、研究の展開に応じて、アジア地域他で国際学会等への参加を計画している。また昨年度購入を見送ったコンピュータなど情報・調査関連の機器を購入するとともに、国際的視野で対象が広がる関連書籍の購入、また調査・打ち合わせ及び研究発表のための国内外の旅費等への支出を行う。
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