本研究は①日本古典文学の海外での教授システムの把握と構築、②バイリンガル等の教材作成の構想、③大衆文化研究の日本古典文学における応用、④日本古典文学における「世界」と「世界」の中での日本古典文学提示の方法論の確立、⑤対外観の中での日本古典文学史の再構築、⑥自照性の比較文化史的問題という項目を基軸とする。その中心部分は当初の計画年度の昨年度までで概ね達成されたが、本年度は、2年前から招聘依頼があったパリのINALCO、パリ大学、日本文化会館でのシンポジウム「身と心の詩学―『源氏物語』を起点として」(2020年3月12-14日開催予定)を本科研の最終地点と定め、期間を延長して研究の総括を行った。(③④)同シンポジウムは仏、日、米、蘭など各国から研究者を迎え、仏日英の3言語で発表する国際学会で、8月初に早稲田大学で打合会、10月のパリ訪問の際にも準備を進め、2月にはすべてのペーパーが揃い、プログラムはEAJS他に告知された。同時にパリ大学の客員として古典文学の講演を予定していた(徒然草の世界と研究の現在)(②④⑥)が、直前に、COVID-19の影響でパリ開催が中止になった。シンポジウムについては2020年6月末を目途に論文を提出し、COVID-19収束後、ラウンドテーブルを行い、出版に向かう。講義は、9月の仏教文学会で講演を行い、成果を発表する。 この他、中国の学術誌40周年記念号に中国語論文を発表した。「グローバル時代における人文学の日越協力」と題して行われたベトナム国家大学ハノイ校でのシンポジウムでは「ベトナムにおける日本文化研究の実践と展開」について発表し、古典文学の国際化と連携そして教育について大きな進展を得た。(①②④⑤)また文学と世界遺産、21世紀の人文知と世界の古典学に関するシンポジウムへの参加も今後の展開(EAJSパネル参加決定や成果出版など)へとつながった。
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