調査の過程で、クレインを取り巻く人脈の中に、従来のブレイク受容史研究の中では論じられたことのない重要な人物が含まれていることと、その人物が実際にブレイクのいくつかの作品に積極的な関心を寄せたことを示す証拠が見つかった。また、英国社会主義思想史の水脈をたどる中で、ブレイクと武者小路実篤との接点を発見したのが大きな収穫である。従来のブレイク研究でも、武者小路実篤研究でも、この事実は知られておらず、本研究計画で当初想定した方向には含まれない発見である。拙論「武者小路実篤とウィリアム・ブレイク――共生と競争の狭間で」(『超域文化科学紀要』22号)は武者小路実篤研究に対する新たな貢献である。
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