研究課題/領域番号 |
16K13218
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
名嶋 義直 琉球大学, グローバル教育支援機構, 教授 (60359552)
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研究分担者 |
庵 功雄 一橋大学, 国際教育センター, 教授 (70283702)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量的研究 / 質的研究 / 見出しの分析 / 政治的記事 / 新聞社の意図 / 批判的談話研究 |
研究実績の概要 |
本研究では,研究分担者が量的研究を担当し,代表者が質的研究を担当し,量的研究の成果を受けて質的研究を展開するという形で研究を進めている。量的研究においては,2015年度の朝日新聞データーベースを資料とし,読者に対する記事配信連絡(アラート配信)における「第1トピックの見出し/第2トピックの見出し/トピック以外の注目記事の見出し」,計1335のデータを収集した。そして,それらの記事の関係する「地域と内容」を分析してリスト化し統計的な手法も用いて分析を行った。その結果、2015年の朝日新聞には、意図的に「(日本)政治」の話題を避けようとする隠された意図が見られることを明らかにした。その内容は研究分担者によって論文化され,紀要に発表された。質的研究においては,道徳教育とオリンピック教育に関する新聞記事,政治家の談話を記事にした新聞記事,萌えキャラに関する新聞報道,沖縄におけるオスプレイ墜落記事などを,通時的・共時的観点から分析して研究論文にまとめ,香港や台湾,韓国などを含む国内外の学会・研究大会・大学主催シンポジウム等において発表したり講演したりした。さらにそれらの研究成果を活用し,言語教育授業への応用や批判的リテラシー教育や市民性教育の重要性などについても発表や講演を行った。それらの発表や講演内容は複数の論文にまとめられた。またそれらの発表内容や論文内容を発展させたものは2018年度中に代表者の単著として刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量的研究においては昨年度はやや遅れがあったが,今年度は目標を達成し論文の刊行に至った。またその量的研究の過程において,取り組むに価する新たな発展課題を見いだすことができたのも研究の進捗状況という点で大きな意味があった。現在は量的研究を担当する分担者がその発展課題に取り組んでいる。質的研究は昨年度の量的研究の進捗状況が影響してやや遅れている。現在は量的研究が明らかにした「2015年の朝日新聞には、意図的に「(日本)政治」の話題を避けようとする隠された意図が見られること」を質的な面からも明らかにすべく研究に取り組んでいる。その量的研究の成果を待っている間に,代表者は独自の視点で新聞記事の質的分析を行い,多くの口頭発表・講演を行い,論文を執筆した。また予定よりも早く書籍の刊行も見込まれている。以上を総合的に判断すると,個別の研究作業にはやや遅れが見られる点もあるが,全体的にはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
量的研究を担当する分担者は,ヤフーのポータルサイトに随時アップされる記事・その見出しをデータとして収集し,そこにどのような記事選択の意図,つまり本研究のいう誘導が見られるかを明らかにする予定である。この課題は上で述べたようにこれまでの研究の過程で顕在化したものであるが,非常に取り組むべき意義の大きいものと考え,最終年度1年のみであるが取り組むことにしたものである。よって課題解決を完遂することは難しい面もあるが,すくなくとも「ポータルサイトにおける記事選択の誘導性」を明らかにする方法論の確立までは行いたいと考えている。質的研究における今後の方策は,まず量的研究が明らかにした「2015年の朝日新聞には、意図的に「(日本)政治」の話題を避けようとする隠された意図が見られること」を質的な面からも明らかにすることが第一の目標である。「どういう政治記事が,どういう非政治的記事の見出しによって,避けられているか」について,データを4半期ごとに分けて分析し,1年を通した傾向を明らかにしたいと考えている。その後は,「ポータルサイトにおける記事選択の誘導性」における量的研究の研究成果を受け,それを質的な点からサポートするような方向で研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画を遂行して一定の結果を出したが,その過程において新たな研究課題が顕在化した。研究代表者と分担者とで綿密な打ち合わせを行い,その新たな課題に取り組むことは本研究のテーマとも合致しており,新課題に取り組むことの方が研究全体を考えたときにより重要であり,重要な知見を明らかにすることが見込まれ,社会的な要請も高いと判断した。そこで当初の研究計画の一部を変更し,2017年度後半以降においては,予定されていなかった「新たに顕在化した研究課題」のために予算を振り分けることとした。そのため,購入予定であった物品の中で購入を控えるものが出てきて,結果的に次年度使用額が生じた。この次年度使用額は,専門的知識を持った人に作業を委託した際に発生する人件費・謝金等,および研究成果を発表する際の旅費等に充当する予定である。
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